「従来の業務提携」のままでも対応可能だが…

巨人ドコモを追いかけつつも携帯事業に行き詰まり感が募るKDDIと、EV化の荒波を前に新たなる手だてを模索中のENEOS。この悩める2社を引き込むことで、なんとしても3位低迷状態を打破したいローソン活性化に向け3社連合で「独自経済圏」を確立しようというのが、主導した三菱商事の思惑だったのではないでしょうか。しかしこの思惑は、思いがけないENEOSの離脱によってもろくも崩れ去ってしまったように見えます。

先のローソン、KDDI、三菱商事3社の共同会見が、中身の薄いものになってしまったのは、このような事情も影響したのでしょう。連名のニュースリリースに記載された提携検討業務は、ローソン・KDDIリアル店舗での相互サービス提供の促進、両社顧客データ基盤の有効活用によるサービス向上、KDDIのDX知見を活用したローソン店舗オペレーションの最適化等々、従来の業務提携のままでも対応可能な内容ばかりであり、「新しい未来のコンビニの創造」の芽は感じられません。もっと言えば、KDDIがなぜ50%の出資をしてローソンを共同経営する必要があったのかが、現時点でははっきり見えてこないのです。

都内のローソン
写真=iStock.com/winhorse
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「共通の課題」に対する解を導き出せるか

ENEOSが脱落してもローソンへのテコ入れ機会を逸したくない三菱商事がKDDIに対して、3社経営から2社経営になることでコンビニ事業への関与が強まり、脱携帯事業の足掛かりをつかむチャンスが大きくなると説き伏せた。折衝のプロである大手商社が、とりあえず相手の気持ちが冷めないうちに成約に持ち込んだ、というのが実情のようにも思えます。

持株比率は50%を維持することで取り込む利益は従来通りでありながら、KDDIの出資により自社の資産効率化を手にする三菱商事は、合意の段階で既に果実を得ているわけです。さすが百戦錬磨の大手商社、といったところではないでしょうか。

コンビニ業界も携帯電話業界も、マーケットの飽和状態と人口減少という共通の課題に対する解を導き出すことが、今後の発展のカギを握っていることは間違いありません。しかしながら、それぞれに巨人が存在する業界にあるローソンとKDDIが、独自戦略を編み出しその巨人を脅かす存在になるのは至難の業でもあります。

“物言う共同経営者”となる三菱商事を含めた3社の意思統一がはかれるか否かが、重要なポイントになるでしょう。三菱商事の思惑から生まれた資本業務提携だけに、「未来形ローソン」が形を整えるまでには、越えるべきハードルが意外に多いのではないでしょうか。

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