対話を生むためにあえて情報を減らす場合も

しかし、一流はさらにその上を行きます。特定の期間だけ成果を残すのではなく、成果を出し続ける人が一流です。

単年度だけでなく3年連続で営業目標を達成した人を抽出し、その方の資料を分析しました。すると、資料の文字数が圧倒的に少ないのです。金融や医薬品、公的機関など情報の網羅性が重視される業界を含めても、一流が作成する資料の1ページあたりの平均文字数は、105文字でした。その短い文字数でしっかりとポイントを押さえ、相手に訴えかける内容が緻密にまとめられていました。

越川慎司『時短の一流、二流、三流』(明日香出版社)
越川慎司『時短の一流、二流、三流』(明日香出版社)

一流がこのようなアプローチを取る理由は、時間の尊重と効率性にあります。彼らは相手の時間も自分の時間も非常に大切にしており、そのためにも最も効率的なコミュニケーションを心がけているのです。さらに、一流は提案書を一方的な情報提供ではなく、対話を生む「きっかけ」の一つと考えます。

なかには、相手に質問させるために資料をコンパクトにする一流もいます。相手に質問してもらうことで、相手に当事者意識を持ってもらい自分の意識で決定してもらうことを促していたのです。

質問をしてもらうために、提案資料には70%程度の情報しか入れないという製造業のトップセールスもいました。つまり、一流の提案書作成とは、相手の興味やニーズに応じて短縮された形で必要な情報を提供し、さらに相手との対話やアクションを促進するものです。このようにして一流は、提案書を真に有用なビジネスツールとして活用して、成果を出し続けているのです。

一流は、1枚につき105文字でまとめ、資料から対話を生む
情報を絞ることで、相手に当事者意識を持って考えてもらえる
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