ホワイトカラーこそAIの影響が強い

プログラマーやクリエイターといった職種は、いわばホワイトカラーです。生成AIの影響が強いのは、このホワイトカラーです。

ホワイトカラーの対義語となるのはブルーカラーですが、こちらはいわゆる肉体労働者で、製造業や建設業、農業、漁業、林業といった生産現場で現場作業に直接従事する労働者を指しています。

このブルーカラーの労働者は、機械やロボットなどの導入によって雇用状況が変わってきますが、生成AIの発展にはあまり影響されません。ただし、たとえばトラックや物流現場、それにタクシー運転手などは、自動運転の導入によっては影響を受けるでしょう。そしてこの自動運転の頭脳部は、AIと密接に結びついており、生成AIもまたブルーカラーに多少なりとも影響を与えると考えていいでしょう。

問題は、ホワイトカラーです。現代のホワイトカラーが担っている仕事の25~30パーセントの業務が、AIによって代替される可能性が高いからです。ゴールドマン・サックスのレポートでも、オフィス事務職の46パーセントが生成AIに影響を受けると報告されていますから、ホワイトカラーの多くの仕事が生成AIに取って代わられる可能性が高いのです。

ホワイトカラーは知的作業だから、機械やITなどに仕事を奪われる心配などない、と考えているようではこのAI化の時代を生き残れません。生成AIが脅威なのは、人間にしかできないと思われていた知的生産を、AIが見事に成し遂げてしまう点です。それも人間より早く、より深い位置にまで到達します。作業速度という側面から見れば、人間などまったく太刀打ちできません。

AI時代に生き残るための条件

もちろん、AIにどのように命令を出すかによって、出来あがってくる成果も大きく異なってきます。正確な命令を与えられれば、より正確で効果的な成果が得られ、そうでなければAIが出力する成果もあまり期待できないものです。

この点から見れば、AI化が進んだ時代にホワイトカラーがどうすれば生き残れるかがはっきりします。AIを使いこなす知識とノウハウを持つホワイトカラーが、AI時代に大きな成果を手にすることができるのです。

AIに仕事を奪われないためには、AIを使いこなす。人間とAIとでは、蓄積されている知識の量に圧倒的な差があります。その差を埋めるためには、AIを恐れず、AIをツールとして使いこなす能力が必要なのです。

田中道昭『生成AI時代 あなたの価値が上がる仕事』(青春新書インテリジェンス)
田中道昭『生成AI時代 あなたの価値が上がる仕事』(青春新書インテリジェンス)

もちろん、同じホワイトカラーといっても、職種や仕事の内容といったものが異なっています。それらの職種で、どのような仕事が生成AIに影響を受けるか、米ペンシルバニア大学やオープンAIの研究者のグループが発表しています。

この研究グループが23年3月に発表した「大規模言語モデルの労働市場への影響に関する初期の考察」と題するワーキングペーパーには、米国の労働人口の約80パーセントがGPTの導入によって、少なくとも仕事の10パーセントが影響を受ける可能性があると報告されています。さらに、労働人口の約19パーセントは、仕事の50パーセント以上が影響を受ける可能性がある、と結論づけているのです。

生成AIはホワイトカラーにこそ大きな影響を与え、その仕事を奪う可能性が高いことを心に留めておく必要がありそうです。

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