次に支払いの際には店員の間違いに気づかず、数日後に釣り銭が多すぎたと気づいたものの、すでに相当額使ってしまっていた場合は、その使途によって異なります。
例えば「普段パチンコに行かない人がパチンコで使ってしまった」といった場合は、手元に残っている金額を返せば足ります。ところが「自宅の光熱費や家賃といった生活費に充てた」というような場合には、全額返還しなければいけないのです。
矛盾しているように思えるかもしれませんが、法律の世界ではパチンコの例について、知らないうちに(善意で)得たお金を、知らないうちに(善意で)費消したと考えます。それで遊興費の分は返還する義務がないのです。しかし生活費の場合は、間違って取得した釣り銭を使ったことで、本来なら支払うべき支出を免れており、利益が残っていると考えます。
ところで、店側による不当利得の返還請求にも時効はあります。それが、お釣りを多く渡した時点から10年となっていて、それを過ぎて相手から時効を主張されると、もはや請求できなくなります。
こうした不当利得には、自分の銀行口座などへの間違った送金も考えられます。これらを使ってしまうと釣り銭のトラブルと同じことになります。多額の振り込みを何年も放置しておいて、それが悪意と見なされ利息を請求されたら大変な金額になってしまいます。
(構成=岡村繁雄 撮影=坂本道浩)