「毎年110万円贈与」には要注意

相続税の先行きが不透明だ。平成23年に相続税法改正の大きな動きがあり、基礎控除額や法定相続人比例控除の引き下げが検討されたが、その時点では見送りに。現在、相続税の課税対象になる人の割合は約4%にすぎないが、見送られた項目が可決されると、課税対象者は倍に増えるといわれている。都内で持ち家のある人の多くが課税対象者になるという分析もある。いずれやってくるかもしれない相続税増税に備え、何かできることはないのか。

図を拡大
「毎年110万円贈与」は少し危険?

意外に効果的なのが、贈与税の基礎控除110万円を利用した相続税対策だ。贈与税は相続税の租税回避を防ぐためにできた税制なので、相続税より税率が高めに設定されている。ただ、年間合計110万円まで控除されるため、その枠内で毎年こつこつと子どもに贈与を続ければ、高税率の贈与税を払うことなく相続財産を減らすことができる。額は小さいが、たとえば子ども2人への毎年100万円の贈与を10年続ければ、相続財産を2000万円減らせる。相続税改正で新たに課税対象になりそうな人は、これを利用するだけで課税対象外になる可能性もある。

ただし、定期的に決まった金額を贈与すると、もともと一括で贈与するはずだった財産を分割で贈与しただけとみなされ(連年贈与)、まとめて課税されるケースがある。連年贈与とみなされるリスクを減らすには、「今年は誕生日に現金80万円」「来年は年度末に株券で100万円」というように、額や時期、財産の種類に変化をつけておいたほうがいい。