2012年11月12日(月)

店員が間違って多くくれた。黙っていたら罪か

想定外のお金の問題-お釣り

PRESIDENT 2012年12月3日号

著者
好川 久治 よしかわ・ひさじ
ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所 パートナー弁護士

好川 久治1993年、東京大学法学部卒業後、大手保険会社に入社。97年、司法試験合格。2002年、保険会社を退職し、現事務所へ移籍。

ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所 パートナー弁護士 好川久治 構成=岡村繁雄 撮影=坂本道浩
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会社帰りに近所のコンビニに寄り、缶ビールとつまみを800円で買って、合計1000円札で支払いました。するとレジの店員が1万円札と勘違いしたらしく、9200円の釣り銭を手渡されました。こうした場合は、一体どう対処すべきなのでしょうか。

このうち9000円は不当利得の返還を定めた民法第703条の「不当利得」に当たります。気がついているのに「自分のものになるかもしれない」と思って黙っていると、刑法第246条1項の「詐欺罪」に問われます。間違いと認識した時点で、申告する義務が生じるからです。

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間違ったお釣りの返還について

気づかずに家に戻り、そこで気がつくこともあるはずです。その時点で店側に連絡して、返金しましょう。これを怠り懐に入れると刑法第254条の「占有離脱物横領罪」に該当します。いずれにせよ、場合によっては罪に問われるわけです。

とはいえ、釣り銭レベルでそこまでいくことはまずなく、民事で解決していくことになります。その際の法的な根拠が民法第703条で、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」とされています。

不当利得の成立には、(1)法律上の原因の不存在、(2)利得の発生、(3)損失の発生、(4)利得と損失の因果関係の存在――の4つの要件が必要です。ここでは、しかるべき理由がないにもかかわらず、多すぎるお釣りを受け取ったわけですから、買った人が利益を得て、店が損失を被ったことになります。ですから、現に残っている利益という意味の「現存利益」をお店に返さなくてはいけません。

遊興費に使ったら返還義務はなし

問題になるのが、もらいすぎたことを知っていたか否かです。

もらいすぎたことを知らなかったとすれば、善意ということになり、現存利益を返せば済みます。しかし、間違いを知りつつ受け取っていたら悪意があったということで、「その受けた利益に利息を付して返還しなければならない」とした民法第704条が適用され、法定金利の年利率5%を加算して返金する義務を負います。

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