2028年にテレビ広告市場を「リテールメディア」が超えると予測されている。その中でも特に注目度が高いのが「アマゾン広告」だ。セブン&アイ・ホールディングスの望月洋志さんと日経クロストレンドの中村勇介さんの共著『小売り広告の新市場 リテールメディア』(日経BP)より、アマゾンの最新事例を紹介する――。
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成長が鈍化するデジタル広告市場

これまで急成長してきたデジタル広告プラットフォームの雲行きが怪しい。新型コロナウイルス禍という“特需”が終わりを迎えようとする中、業績が振るわない。2023年4月25日の米グーグルの持ち株会社である米アルファベットの23年第1四半期(23年1~3月)決算発表では、主力の広告全体は0.2%減の545億4800万ドル(約8兆2000億円)となった。

動画広告プラットフォームのYouTubeの広告売上高が約2.6%減と3四半期連続で減少したことが大きな要因だ。デジタル広告支援会社の電通デジタルの瀧本恒社長は「この3年間の間にデジタル広告市場の伸び率が少しずつ鈍化しているのは事実だ」と言う。

日本国内でも、事業成長の鈍化を理由に大手広告プラットフォームに大きな動きが見られる。Zホールディングス(ZHD)、ヤフー、LINEの3社は23年10月に合併した。「22年度後半に入り、急速に市場環境が悪化。業績をけん引してきた広告では、収益が急激に減退」(ZHD)したことがその理由。「広告商品としての競争力の低下も(広告収益悪化の)一因となりつつある」(同)と危機感は強い。

電通デジタルは「アマゾン専門チーム」を設置

既存の広告プラットフォームの成長が鈍化する一方で、台風の目となっているのが米アマゾン・ドット・コムが手掛ける広告サービス「Amazon広告」だ。アマゾンの22年の年間広告売上高は377億3900万ドル(約5兆6000億円)で、前年から21.1%増と引き続き好調。EC事業者ならではの独自性の強いデータを用いた広告サービスの展開で、急速に広告市場での存在感が高まっている。先行する米グーグルや米メタを猛追する。

日本でもECサイト「Amazon.co.jp(以下、Amazon)」が多くの企業にとって既存の小売業と並ぶ重要な販売チャネルとして規模が拡大するにつれ、メーカーなどがAmazonでの販売を拡大するための広告活用を活発化させている。

急速に需要が高まるAmazon広告の活用支援の体制を底上げするため、電通デジタルは「Amazonルーム」と呼ばれる専門チームを設置。18年1月の設置時点では5~6人が所属するだけだったが、この5年で30人を超える規模にまで拡大した。「広告商品の販売を始めてから、毎年、取扱高は上昇している。他のプラットフォームは伸び率が頭打ちになりつつある中、肌感覚では1.5倍のスピードで成長している。こうした中、Amazon広告支援への人的なリソースの投下が加速している」と電通デジタルのコマース部門Amazonルーム第1グループ志賀靖氏は説明する。