なぜ政策のないガーシーが30万票も集められたのか

すでに「なつかしニュース」のようになってしまったが、昨年参議院選挙に出馬したガーシーのYouTube登録者はおおよそ120万人だった。個人名での得票は28万票の得票である。これをどう捉えるか。

ガーシーの10倍以上の登録者がいるYouTuberやインフルエンサーは複数存在する。彼らが出馬したとして、10倍の得票、つまり200万~300万票が獲得できるのか。そう簡単にはいかないだろうが、考えてみる価値はあるだろう。

政策的な方向性がほとんどなく出馬したガーシーが30万近い得票を獲得できたことを考えれば、「政党」や「政治家」としての体裁を整え、拒否感を消す工夫をすれば、既成政党に対抗しうる台風の目となる可能性は十分にあるのではないか。

これまでの時代も全国比例には多数のタレント候補者が立候補してきた、アントニオ猪木氏のように政党を立ち上げたケースも存在する。

時代が異なるのは、個人の人気がメディアでの影響力に直結するということだ。

ネットを足掛かりに党勢を拡大するミニ政党

かつては、いくらテレビで人気の有名人でも、その人気はテレビなどの規制メディアを通じてしか発揮できなかった。つまり、「政治家」という枠にハマったとき、その力は大きく制限されてしまうわけだ。

しかし、インフルエンサーは違う。彼らは自ら発信できるメディアを持ち、支持する人にタイムリーに主張を届ける力を持つ。そして、公選法による規制を除けば、メディアのように横並びになることなく、かなり自由に活動することができる。

重要なポイントは、1年経つごとに新聞・テレビなどのマスメディアの影響力は落ち、インターネット、あるいはSNSの影響力は上がっていくということだ。

ネットでの選挙活動
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当たり前だが、今の10代は10年経てば20代になる。10年後の60代は今の50代である。今の50代のSNS利用頻度を考えれば、高齢層を含めてインターネットが唯一有権者にリーチする手段になってもおかしくない。

すでに、参政党やNHK党など、ネット発の政党が参議院の比例得票により議席を獲得し、国会で足がかりを作っている。

これが加速していけば、党首の影響力を中心とするミニ政党の全体的な得票が底上げされ、既成政党が圧迫されていくことになる。