「おひとりさま」で老後を過ごすときの注意点は何か。司法書士の太田垣章子さんは「70歳を超えると、お金があっても賃貸物件を借りることが非常に難しくなる。住む場所については現役世代の間に準備しておいたほうがいいだろう」という――。

※本稿は、太田垣章子『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

虫眼鏡と家
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです

空室があるのに、借りられない人がいる

コロナ禍以降、長期に亘って住宅ローンを組むのはリスキーだと、賃貸の需要は増えています。特にファミリー物件の注目度は高く、業界は物件数が足りないと活気づいています。

これは単純にファミリー層が増えたというよりは、リモートワークなどで、家で仕事をする人が増えたことから、人数以上の部屋数を求める傾向の表れだと思います。特に夫婦共働きでその二人ともがリモートワークになった場合、リビングで揃って仕事をするというのは無理があり、それぞれ個々に仕事部屋が必要になるからではないでしょうか。

一方でワンルーム等の小さな物件は、もともと供給過剰気味のところもあり、いったん今の入居者が退去してしまうと、新しい申し込み者を確保するのに苦戦するようになりました。

その理由は、単身者は今まで「寝るだけ」の部屋で良かったところ、「仕事部屋」的要素も求めざるを得なくなり、広さ的に条件を満たさなくなってしまったからです。その結果、単身者世帯用の狭い部屋は、空室が目立つようになりました。

ところが、その空室が目立つ狭い部屋ですら、70歳になるとなかなか借りられません。

空室があって、それを借りたい人がいて、相互に求めているものが合致しているようにも感じますが、高齢者はほとんど貸してもらえないのです。

実際どれくらい借りられないものなのでしょうか? 50件問い合わせをして、高齢者に部屋を貸してくれそうな対応は2、3件と言われています。

持ち家の一軒家に住み続けていた78歳女性

真千子さん(仮名・78歳)は、部屋が借りられず、ほとほと困り果てました。

もともと長年ご主人名義の持ち家に住み、2人のお子さんもその家で育て上げました。その息子たちも立派に成人し独立していくと、老夫婦には一戸建ては大きすぎるね……とご主人とも話し合っていました。

それでも長年住んだ一戸建てからの引っ越しは、荷物の整理や断捨離も大変です。物理的に荷物の量を減らしてサイズダウンしないと、引っ越しの意味がなくなります。高齢になればなるほど、その負担は計り知れません。

そのため孫が遊びに来た時に戸建ては飛び跳ねても安心とか、息子たちが家族で来ても皆で泊まれると、さまざまな理由を付け、ついつい引っ越しを先延ばしにしてきました。