経済的なピークに達すれば反動が起きるのは資本主義の宿命

【バリバリ資本主義者】たとえば、日本ではバブル崩壊以降に景気が停滞してしまいましたが、これは国家が規制を厳しくしたことが原因という見方もあります。自由主義経済に、社会主義的な介入をしない方がいいのではないでしょうか。

【マルクス】そうですかね。バブルというのは、株や土地に投機して、利益を得る、つまり働かないで儲けるというよくない考えが表面化したものだと思います。バブル崩壊の原因は諸説ありますが、経済的なピークに達すると、その反動が起こることは資本主義の宿命だともいえます。自己実現のために働いて物を生産し、足るを知るという質素な哲学がないからバブルが発生するのです。

【バリバリ資本主義者】いやいや、人間は欲望をもっているから、それを満たすことが大切なんだと思いますよ。欲望があるからこそ、新しいものをつくれる。新しいものをつくるから、また新たな欲望が生じる。そうやって自己実現していくという過程が成長なのだと思います。資本主義社会における人間の生きがいは、経済成長と言い換えてもいいと思いますよ。

社会主義における理想は「労働=生きがい」だった

【マルクス】その考えが残っているから、あなたの時代に矛盾が露呈してきたのではないでしょうか。そもそも社会主義の哲学では、人がそれぞれ自分の才能を適材適所で活かして、「労働=生きがい」とすることが理想だったのです。でも、資本主義では自分が社会の部品のようになって、嫌な仕事でも賃金を得るために働き続けなければなりません。これは人間が疎外されているということです。こういうことが、現代になってはっきりとわかってきたのだと思いませんか。

KEYWORD 人間が疎外されている(人間疎外)
人間疎外とは、資本主義社会の巨大化・複雑化によって、人間が機械を構成する部品のような存在となってしまい、本来の人間らしさがなくなってしまうことをいう。社会主義の哲学によれば、人々が自己実現としての労働(好きな仕事をすること)を行えば、自分自身の本来性が取り戻され、人間疎外は解消されるという。

【バリバリ資本主義者】だったら、今の日本はだんだん質素になってきていますけど、それでいいんでしょうか? 経済というのは、心理的な作用がとても強く影響するものです。少子化と高齢化に加えて、欲望までなくして無気力化が進んだら、日本は終わってしまうかもしれません。

【マルクス】でも、しょうがないですね。資本主義は欲望を煽りすぎて、余計な仕事とモノをつくりすぎたのです。我々は「労働は賃金を得るためのものだ」という非本来的な姿を反省するべきです。労働は自己実現なのであって、金の奴隷となるためのものではありません。最近では「好きなことをやって生きていく」という目標を掲げる人も多いようですが、これを実現するには、社会主義こそが向いているのです。