なぜドジャースにはお金があるのか

大谷は、今春に米経済誌フォーブスが発表したメジャー選手の年俸“外”収入ランクで3500万ドル(約51億8000万円)の堂々1位。超人気球団移籍で存在感が増すばかりの大谷のエンドースメント(CM出演、企業の肖像権利用やグッズの商品化権など)は、今後、さらに大きな広がりが見込める。

一方、球団への経済効果も必至。ドジャースはメジャー屈指の優良企業。昨季の総収入5億6500万ドル(約819億円)は30球団で最高額。今年も順風満帆で、圧倒的な集客力で一頭地を抜く。

2023年の総観客数は約384万人で1位。1試合平均が4万7371人で、2位ヤンキースの4万862人を6509人も上回った。大谷の加入で、広告、チケット販売、駐車場料金、球場内の物品販売などの売り上げ増収も期待できる。

ロサンゼルスのドジャースタジアム
写真=iStock.com/Amy Sparwasser
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メジャー球団の収入源の5本柱となるのが、(1)チケット販売、(2)放映権料、(3)マーチャンダイジング(商品ロイヤリティと球場内物品販売)、(4)スポンサーシップ(映像や登録商標などの素材提供)、(5)その他(映像や写真の貸し出し、駐車場料金、イベント開催など)だが、その中で安定した経営を支えるのが放映権料である。

ドジャースは放映権料でも他を寄せつけない。米データサイト「FanGraphs」によると、ドジャースの地元テレビ放映権料は、年平均2億3900万ドル(約347億円)で1位。2位エンゼルスの1億3800万ドル(約200億円)を約1億ドルも上回っている。

球団オーナーは33兆円を管理する

そもそもテレビの地元放映権料が1億ドルを超えているのは6球団だけ。その中で、ドジャースが抜きんでるのは、「タイムワーナー・ケーブル」社と結んだ2014年から25年間で総額約84億ドル(約8580億円)の大型契約が背景にある。

先に示したドジャースの総収入約819億円に次ぐのはヤンキースで4億8500万ドル(約703億円)。大谷の加入で東の名門との差はさらに広がる可能性がある。

こうして営業の諸相を見ると、メジャー屈指の人気球団ドジャースが大谷翔平獲りに1015億円もの巨額投資ができるのもうなずける。

付言すると、リーグの規定で来年からの後払い分には、“積み立て貯金”での資金確保が求められる。開始は2年以内から。つまり、支払い開始は10年後でも、26年から6800万ドル(約98億6000万円)の用意を毎年しなければならないが、安定した収入源から万端の準備が進められる。

ドジャースの運営は「グッゲンハイム・ベースボール・マネージメント」が行っている。オーナーはマーク・ウォルター氏(63)。約3000億ドル(約33兆円)を管理するグローバルな資産運用会社「グッゲンハイム・パートナーズ」の最高経営責任者(CEO)であり、同グループは株式や債券、商業用不動産、エネルギー産業などへの投資のほか、保険会社も有し堅実な運用実績を誇っている。