博士号などの学位を取得しても、定職につけず、生きづらさを抱えている人たちがいる。そうした「高学歴難民」には、特有の困難がある。とりわけ深刻なのが家族との関係だという。犯罪加害者の家族を支援するNPO法人の代表で、『高学歴難民』(講談社現代新書)を書いた阿部恭子さんに聞いた――。(第3回/全3回)
寝室に座るうつ病の男性のシルエット
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「勉強している子どもを止められない」

(第2回から続く)

――本書では、高学歴難民を持つ家族の苦悩についても書かれています。なかでも、「息子は学ぶ意欲はあるのですが、働く意欲はないんです。その問題に親が気づくのに時間がかかってしまったんです」という言葉がとくに印象に残りました。こうしたケースはよくあるのでしょうか。

教育投資を2000万円以上かけたのに、30歳を過ぎても無職のままでいる息子を持つ家族のケースですね。この事例は極端ですが、「勉強が好きでも働く意欲がない」というケースは非常に多いです。ただ、いくら勉強するのが好きでも、社会性がないと生かせません。

私も大学院時代に「勉強するのは好きだけど、どうやって稼いでいこう」と悩みました。私の場合は葛藤があったのですが、その葛藤がないままに勉強をひたすら続けてしまうと、高学歴難民になってしまうおそれがあります。

――子どもが勉強ばかりして社会性が身につかない背景には、やはり家庭での教育も関係しているのでしょうか。

最も大きな要因は、「勉強している子どもを親が止められない」ことにあります。たとえば、万引きなどの非行は怒れますが、一流大学の大学院で懸命に勉強している子に口を出すのは簡単ではないでしょう。すぐに働きたくないから、やっていて楽しいからという理由だけで勉強を続けているのであれば、それは社会から逃げていると言われても仕方ない部分もあります。厳しい言い方をすれば、遊んでいるのと変わりません。

子も勉強してさえいれば、親に叱られないとわかっているから甘えてしまいます。結局のところ、親と子の間にある共依存的な関係が問題なのです。