学歴は毒にも薬にもなる

――本書ではタイトルにもあるように「学歴」を軸にした、さまざまな事例が紹介されています。改めて、学歴とは何なのでしょうか。

使い方次第では、毒にも薬にもなるものだと考えています。

学歴社会はまだまだ続いているものの、昔と比べて高学歴が持つ力は弱まってきている印象です。むしろ、博士課程まで進んで研究者の道を歩めなければ、「高学歴のくせに」と言われて、学歴の烙印らくいんに苦しむ人もいます。学歴に見合ったキャリアをつくっていけるよう努力をしていかないと、かえってつらい結果を招いてしまいます。

阿部恭子『高学歴難民』(講談社現代新書)
阿部恭子『高学歴難民』(講談社現代新書)

「学歴ロンダリング」のように、後から学歴にはくを付けることはできますが、落とすことはできません。努力が報われなかっただけではなく、後にも戻れないわけですから、二重にも三重にも苦しいですよね。

学歴がなくても実績があり社会的地位を得ている人々もいます。彼らと高学歴の人の間には、経験を積んだ場所が社会なのか、大学という特殊な場所なのかの違いしかなく、そこには経験としての優劣はありません。

高学歴難民となってしまったとしても、過去を卑下するのではなく、「こんな専門性を得ました」「こんな人脈をつくりました」といった経験に誇りを持ってよいはずです。なくてもありすぎても、学歴だけで差別される世の中は良くないと思います。

(構成=佐々木ののか)
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