漢字が苦手な子の大半はそもそも漢字を読めていない

私が初任の時に受け持ったある子は、漢字が大の苦手でした。前日に問題を予告されて、なおかつ宿題として練習をした後に受ける漢字小テストでも、10〜20点しか取れないのです。こういう子は少なくありません。「自分はどうせできない」と思ってしまうと、漢字学習に対して後ろ向きな態度で、意欲を全く示さなくなります。

小学生の子どもたちにとって、自分から「やりたい!」という前向きな気持ちで意欲的に学習に取り組むことは、非常に重要です。意欲なきところに成果は絶対についてきません。だからこそ漢字に苦手意識をもってしまった子たちの学習の成果が出にくくなりますし、全く取り組まない子も出てきてしまいます。

そこで、私は長年漢字指導の改善に取り組んできました。まずは、漢字が苦手な子どもたちをよく見て分析するところから始めました。そうすると、多くの漢字が苦手な子は「そもそも漢字を読めていない」ということが分かりました。

先に徹底的に読ませることで漢字に見慣れてもらう

一般的には、「漢字テスト」というと、小学校ではなぜか「書き」のテストばかりが行われます。しかし、読みのテストをしてみたところ、漢字が苦手な子の多くはそもそも読みすら分かっていなかったということが分かりました。

『角川まんが学習シリーズ どっちが強い⁉身につくドリル 小学1年 漢字』(KADOKAWA)
土居正博(監修)『角川まんが学習シリーズ どっちが強い⁉ 身につくドリル 小学1年 漢字』(KADOKAWA)

また、音読の様子を見ていてもそうです。漢字の読みが習得できていない子は、必ず漢字でつまずきます。読めてもいなければ、テストで書けるはずないのは火を見るよりも明らかです。ですから、私は子どもたちに対して「まず読めるように」という方針で漢字指導をしていくことにしました。

書き方やとめはねはらいなど細かいことは置いておいて、まずは読めるようになる。そのために、何度も何度も漢字を読ませました。しかも、まだ書き方を学習する前から、学年1年間分の漢字全てを毎回の授業で読ませていました。そうすることで、書き方を学習する頃には、みんな漢字を見慣れていて、読めるようになっていました。そのため書きの習得も早く、スムーズになりました。

子どもたちは、「漢字の学習といえば何度も繰り返し書くこと」という固定観念があったようで、書かせる前に何度も何度も、しかも一年間分の漢字を毎回の授業で読ませる私の指導に新鮮さを感じていたようです。とても楽しそうに取り組んでいました。

読みの習得は書きの習得よりも比較的容易であり、苦手な子も含めた多くの子が習得していきました。それと同時に、子どもたちは自分でも「読めるようになってきた!」と自分の成長を実感していて、それが更なる学習意欲につながっているようでした。