「お母さん、流しそうめんのイベントだって」

バツイチ子持ちの40代筆者が、意を決して婚活アプリを始めたものの、最初にマッチングしたのが「ヤリモク男」だったことは前回述べた。そのアプリは1週間で退会した。

婚活を勧めてくれた成人している娘に一部始終を打ち明けた。すると彼女はスマートフォンで何かを検索し、しばらくして目を輝かせて顔をあげた。

「お母さん、流しそうめんのイベントだって。こういう場所のほうが“いい人”いるかも。行ってみたら?」

皿にもったそうめん
写真=iStock.com/yumehana
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娘が差し出したスマホの画面には、婚活業界大手企業が主催する婚活パーティが。関東のある週末、土日の2日間だけで30~40ほどのイベントがずらりと並ぶ。散歩やボルダリングなど体を動かす「スポーツ婚活」、クッキングやアート体験など「モノづくり婚活」、ランチやディナーなど食事付きの「合コン」など。サークルのような雰囲気で、どれも楽しそうだ。

「流しそうめん」のイベントも、流す機械さえ見たことがない私には、たしかに面白そうに感じた。参加対象は〈40代と50代の男女〉〈恋愛に前向きな人〉だった。参加費は男性4500円、女性1800円。都心の駅直結のイベント会場で開催される。

婚活アプリではなくイベントを通してリアルに会ってみよう。

ここから婚活パーティへの怒涛の参加が始まったのだった。

10畳ほどの部屋に4人がけテーブルが2つ

「本日は流しそうめんのイベントにお越しいただき、ありがとうございまあす」

事務局の若い女性がマイクを握りしめて甲高い声で挨拶する。10畳ほどの広さの部屋に4人がけのテーブルが2つ。テーブルの上にそうめんを流す機械がドーンと置かれている。それぞれのテーブルに、男女2人ずつ計4人が座る。胸には自分で記入したニックネームの名札。しかしその名札どころか、誰もが下を向いたり顔をそらしたりしてお互いを見ることもない。

「それでは機械のスイッチをオンにして、そうめんの具材を取りにきてください」

マイクの声がうるさく感じるほど、会場は静まり返っている。

私は立ち上がり、隣の男性と目を合わせて、具材を取りに行く。といってもツナ缶や、パッケージに入ったプチトマトを取りに行くだけで、大人が2人で取りに行く量ではないのだ。しらけたムードが漂う。