チームでやるべき仕事なら“後ろ向きな仕事”ではない

以上の手順で、いよいよチーム内で割り振るべき仕事が明らかになった。次に、上司は該当する部下に休職者の仕事のフォローを依頼することになる。

そこで大切なのは、依頼する部下に任せる仕事への動機づけをしっかりと行うことだ。

フォロー役の部下と共有し、動機づけすべきことは二つある。一つは、チームの目的への動機づけであり、もう一つは、部下本人の目的への動機づけだ。

前川孝雄『部下を活かすマネジメント“新作法”』(労務行政)
前川孝雄『部下を活かすマネジメント“新作法”』(労務行政)

まず、チームの目的への動機づけについて見てみよう。先ほどの[図表1]によって、“チームとして今こそ前向きに取り組むべき仕事”は既に精査済みだ。それは、組織やチームにとって、さらにアクセルを踏むべき仕事(分類②)、あるいは新たに創出することが求められる仕事(分類④)である。単に休職者が出たために残ってしまっただけの、後ろ向きな仕事ではない。

そこで上司は、あらためてその仕事の顧客・社会への価値を言語化し、この意味づけを部下と共有することだ。フォロー役の部下としては、組織やチームにとって大切な仕事だと再認識することで、自分だから任されたと感じ、前向きに取り組むことができる。

部下の成長やキャリア形成への動機づけも行う

もう一つは、部下本人の目的への動機づけだ。新たに部下に任せる仕事が、本人の成長やキャリア形成にとってどのような意味を持つものか。上司は部下のキャリアビジョンや成長の可能性と照らし合わせて、しっかりと動機づけを行いたい。

そのためには、上司には、日頃から部下一人ひとりの仕事への思いや、持ち味、将来のキャリア希望などを把握しておくことが求められる。新たに担う仕事が、部下にとって関心の高いものであれば好都合である。これまでに経験のない未知の仕事であっても、部下の持ち味を活かし、経験の幅を広げ、今後のキャリアアップにもプラスになる面が必ずあるだろう。その可能性と期待を伝え、部下本人も納得をした上で仕事を任せることだ。

部下が新たな仕事をチームの目的と自分の目的に合致した意味あるものと捉えられるようになれば、自らの働きがいにもつながるはずである。

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