『モンスターハンター』が巨大IPになるまで

売れるゲームとは何か。もちろん面白い作品であることは必要不可欠な要素だが、その時代の遊び方にあっているかどうか、という環境要因も強く作用する。

カプコンのメガヒットコンテンツ『モンスターハンター』(2004)は、1993年にカプコンに入社し、ゲームデザイナーの道を10年経験してきた藤岡要氏による作品だ。藤岡氏にとって初めてゲームディレクターとして作った作品だった。

「モンスター狩り」のコンセプトは、カプコンが得意とするアクションゲームに、最大4人のユーザーと同時にプレイできる要素を掛け合わせて生み出された。

コンセプト自体はシンプルに思えるが、当時の通信環境で4人同時のアクションプレイを遅延なく同期させる技術はかなりハードルが高かった。

藤岡氏は、大型モンスターこそ4人全員の各画面に映すが、小型モンスターは他のユーザーと共有しないなど「節約」を効率的に入れることによってそれを実現した。

実は『モンスターハンター』は2004年の販売当初からヒットしたわけではない。PSP(プレイステーションポータブル)用のソフト『モンスターハンターポータブル 2nd』(2007)で初めてミリオンセールスを記録している。

PSPという持ち歩きのハードの誕生により近距離にいる友人とつながって遊ぶ環境ができたことで、敷居の低いオンラインアクションゲームとしての面白さが広く伝わった。

このヒットの結果、当初は50人規模だった開発人員もいまや300人を超える規模になっている。その後の爆発的な広まりは周知のところだろう。

15年たってようやく咲いた

会社の命運を握るIPは、意図して生まれるのではない。モンハンも最初からカプコンを牽引するソフトとして誕生したわけではない。

最初のヒットをきっかけに、突如出てきた時代の需要を掴むなかで、開発者の確保と開発費用の集中を行ったことが大きい。さらに海外ユーザー比率、ソフト販売のデジタル比率、旧作比率という先が読めない環境要因のなかでうまく舵取りを行ったからこそ、巨大IPになったのである。

そしてそのIPがカプコンの業績や時価総額として表れてくるのは、最初のリリースから15年以上もたってからなのだ。

IPは単体のヒット作では生まれない。それをシリーズ化しながら“運用”し、中長期で育てていかなければいけない。一朝一夕でハンティングするものでなく、時間をかけながら土壌ごと改良していった末に結実する。農業的なスタンスが必要なものなのだ。

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