「強制収容所を建設している」というウソが拡散

ハワイの山火事では、さらに悪質なデマがソーシャルメディアに出回った。被災した人々への救援活動を展開する米緊急事態管理庁(FEMA)の信頼性を失墜させ、支援活動を難航させる投稿だ。

動画は複数の簡素な住宅設備を映し、住民を収容する「強制収容所」をFEMAがハワイに建設しているとする内容だ。AP通信は「しかし、ビデオに映し出された住宅はFEMAが建設したものではなく、連邦政府がマウイ島火災で行っている継続的な施策とは何の関係もない」と指摘。「実際のところ、どのプロジェクトもマウイ島内には存在しない」とも述べ、偽情報であると警告している。FEMAは被災者への資金援助を行っているが、住宅の建設は実施していない。

ハワイの住宅の敷地内に着陸しているヘリコプター
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映像に映し出されているのは、実際は退役軍人やホームレス向けに建設された南カリフォルニアの簡易住宅や、新型コロナのパンデミック時にオーストラリアで建設された隔離住宅などだ。これらの住宅は、FEMAが建設したものではない。FEMAのジェレミー・エドワーズ報道官はAP通信に対し、「FEMAが強制収容所を建設したという噂とそれを広める動画は全くの誤りです」とメールで証言している。

さらに偽情報の動画は、一部の住宅から伸びるダクトについて、「極悪非道な役人たちが、キャビン単位で簡単に毒ガスや無力化ガスを送り込むことができる」と虚偽の主張を行っている。カリフォルニア州チュラビスタ市のミシェル・クロック市長は、これらのパイプは消火設備であると解説する事態になった。

政府機関や救助活動する人々を貶める狙い

ハワイの司法小委員会では、AIを含めた偽情報の影響が問題視された。出席したMicrosoftのブラッド・スミス副会長兼社長は、偽情報の拡散への怒りを露わにしている。同社は偽情報との闘いを繰り広げており、ハワイの災害後にはAIを活用した被害情報の把握を行うなど、災害時のAIの有効活用を模索している。

小委員会では中国に加えてロシアの情報工作が取り上げられた。スミス氏はその文脈を受け、ハワイのオンラインニュース局であるマウイ・ナウが公開した小委員会の動画のなかで、中露の工作を次のように批判している。

「私たちはアメリカとして、また他国の政府とともに、そして国民とともに立ち上がり、意見の相違を乗り越え、今日の世界には越えてはならない明確なラインが必要だと明言しなければなりません。地震やハリケーン、津波や洪水が発生したとき、世界はひとつになります。人々は寛大です。救いの手を差し伸べます」