一連の情報操作キャンペーンについてMicrosoftは、中国公安省内のエリート班である「912特別作業グループ」の過去の活動と、高い類似性を持つと分析している。過去には投稿に単なるイメージ画像や手描きのイラストをプロパガンダに添えていたが、今回のようなAI画像はさらに人目を引く可能性があるとMicrosoftは指摘する。

同社の報告書は「以前より高品質になったこれらの視覚的コンテンツは、すでに正規のソーシャルメディアユーザーから高いエンゲージメントを得ている(多くの回数表示されている)」と分析している。投稿アカウントは、居住地をアメリカ国内と記載し、アメリカの政治的スローガンを投稿するなどで米有権者を装っていたという。

暗い室内でノートパソコンを使用する男性の手元
写真=iStock.com/George Melin
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ハワイ島の山火事でも「AIニセ画像」が拡散

8月8日に発生し、少なくとも115人が死亡したハワイ島の山火事についても、AI画像を使用した偽情報が拡散した。アメリカの「気象兵器」が空から放ったレーザービームが火災を起こしたとのフェイク情報だ。天地に走る鮮やかな光を捉えた動画がソーシャルメディアで拡散された。

AP通信はファクトチェックを行い、この情報をデマと断定した。記事は「広く共有されている動画は、今年初めにチリで起きた変圧器の爆発事故のものである」と述べ、まったく関連のない動画だと指摘している。

動画に捉えられた光はレーザービームではなく、地上の変圧器が爆発した結果生じたものだという。動画をよく見ると、小さな光の爆発がまず地上で起こり、その後に空への光の筋が浮かび上がる。天空からのビームではなく、爆発が地上で起きたことを示唆している。

さらに、指向性エネルギー兵器(DEW)の研究者であり、コロラド大学ボルダー校・国家安全保障イニシアティブセンターのディレクターでもあるイアン・ボイド氏は、AP通信に対し、「火災を引き起こすのに十分な熱量を持った近代的なレーザーは、赤外線を用いるため、肉眼で見えることはありません」と指摘する。

投稿は中国のアカウントばかり…

ニューヨーク・タイムズ紙は、この動画とは別に、本件でもAI画像が使用されていたと報じている。記事は「投稿された写真はAIプログラムによって生成されたとみられる」と述べ、「偽情報キャンペーンの信憑性を高めるために、こうした新しいツールをいち早く利用したのである」と結論づけている。投稿に生成画像を添えたねらいについては、「投稿の信憑性を高める」効果があるとの分析だ。

画像を分析したMicrosoftの研究者によると、AI画像はネット掲示板「Reddit」のオランダ語版など、複数のプラットフォームで見つかったという。こうした画像は、一連の情報操作で使用されている中国のアカウントが専ら使用している。その他の場所では見られないことから、情報操作専用に生成されたAI画像だと推定される。