「ですが、マウイ島の火事の後に起こったことを見てみましょう。それとは正反対だった。クレムリンの指示とは限らないが、日頃からロシアのプロパガンダを流している人たちが、ラハイナの人々が自分たちを助けてくれる機関(FEMA)に頼ることを思いとどまらせようとしていたのです。許しがたいことです」

「また、中国が仕向けたと思われる活動によって、問題の火災は米政府が気象兵器を使用したために起きたのだと、複数の言語で世界中を誘導しようとしているのを見ました。このようなことは、国際社会が一致団結し、断固禁止するよう合意形成に努めるべきです」

偽情報に残る“中国政府”の痕跡

オンライン情報の真偽を検証するニュースガードは、米軍の気象兵器がハワイの山火事を起こしたとする偽情報の出所について検証している。中国政府との関連は断定できないものの、少なくとも中国語話者がオンラインの活動を推進しているという「強い証拠」を発見したという。

ニュースガードによると、気象兵器に関する偽情報はFacebookやX(Twitter)を含む、14の主要なプラットフォームで確認されたという。投稿は15の言語で実施されていたが、このうち中国語の投稿のみ、他の言語よりも少なくとも2日早く公開されていた。

さらに、他言語の記事の多くに奇妙な表現が散見された一方、中国語版の記事は比較的自然に読めた。こうした事実から、はじめに中国語で記事を執筆し、他言語の記事へ自動翻訳を行った可能性が疑われる。

夜のアジアの衛星写真
写真=iStock.com/NicoElNino
※写真はイメージです

85のアカウント・ブログの共通点

加えて、投稿を行っていた85の偽アカウントとブログの特性が、ニュースガードが過去の調査で発見していた中国関連の情報操作と酷似していた。名前やプロフィール画像のパターンに共通点が見られたという。

デマ拡散に関与していたアカウントの一部は、親中国のメッセージを主に拡散していた。例えば、質疑応答プラットフォーム「Quora」で韓国語で情報を拡散していた特定のアカウントは、恋愛や宗教、技術的な質問などの投稿に対し、中国国内の反体制派やアメリカを批判するような、関連性の薄いコメントを中国語や英語で返していたという。

これらのアカウントはまた、2022年11月に中国で起きたゼロコロナ政策への抗議デモや、日本の福島原子力発電所からの処理水の放出などを批判していた。こうした話題は、中国の国営メディアが熱心にネガティブな報道を行っている内容とも重なる。

ニュースガードによる調査結果についての問い合わせを受け、Facebookの運営元であるMetaは、問題となっている一部のFacebookアカウントについて回答。同社が2019年から監視対象としている、中国のスパム行為アカウントと一致すると裏付けた。