わが子はどんな声をかけて育てるべきなのか。文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二さんの共著『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)から、声かけのポイントを紹介する――。
テーブルの下に隠れる男の子
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
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子どもに「ちゃんとしなさい」と言ってはいけない

どう片づければいいの? コウタ(小5)
いつも部屋を散らかし放題のコウタ。机の上は何が置かれているのかわからない状態、漫画を読んだら床に出しっぱなし……。「ちゃんと片づけなさい!」と叱るのが母親の日課になっています。叱られると少しは片づけるのですが、母親の考える整理整頓には程遠い状態です。
そんなある日、いつものように、片づけをしないコウタを叱ると――。
「うっせえなあ、クソババア!」
コウタは、勢いよく本を壁に投げつけ、壁に穴を開けてしまいました。
母親は驚きのあまりその場に立ち尽くしています。

「ちゃんと宿題をやりなさい!」
「ちゃんとした格好をしなさい!」
「ちゃんと挨拶をしなさい!」

子どもに注意をするとき、「ちゃんと」という言葉を使っている親御さんがとても多いように感じます。「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」などは、そのときの状況によって定義の変わる「あいまい言葉」です。この言葉を使うことによって、子どもの脳は不安になり、混乱し、脳の成長が阻害されてしまいます。

「ちゃんと」などの「あいまい言葉」が判断できるようになるのは、大人になってからです。前頭葉は、論理的な思考をする、行動のために計画を作る、自己を客観化するなどの「高次脳機能」と呼ばれるさまざまな機能をつかさどります。

大人は前頭葉がすでに十分に発達しているために、「あいまい言葉」にあたる内容を、前頭葉を使いながら状況に合わせて理解することができます。しかし、小学生の前頭葉はまだ発展途上です。大人のように、「あいまい言葉」を状況に合わせて判断し、行動するのはとても難しいことです。