病院という垣根が低くなると、病気の早期発見に繋がる

【大﨑】ぼくの知り合いの起業家がゴルフ場の中に田んぼを持っていて、彼らの家族と遊びに行ったことがあるんです。そこで田植えを経験するという目的だったんですが、子どもたちは汚れるからってやらない。18人の子どもで、田んぼの中に入ったのはたった2人だけ。みんな足が汚れる、汚いっていうんです。

千船病院広報誌『虹くじら 03号』
千船病院広報誌『虹くじら 03号』

【吉井】田植えの時期の田んぼにはヒルもいますからね。僕は兵庫県たつの市出身で、実家が兼業農家でした。小学校低学年の頃は田植えも機械化されておらず、田植えの手伝いもしました。土に触れることは好きですが、ヒルに血を吸われて痒くなった記憶があります。

【大﨑】姫路市の隣りですね。すごくいい環境ですよ。

【吉井】ところが、地方では就職先である企業がたくさんあるわけではないので、同級生も大学進学で東京に行くと、卒業後は半数ぐらいしか地元に戻ってきていません。地方の過疎化は想像以上の早さで進んでいるように思います。

【大﨑】西淀川区は工業地帯なので、田んぼや畑はそんなにない。区との共創に加えて病院を核にして、農家の方々、地域の子どもたちを結びつけるのも面白いんじゃないでしょうか。

【吉井】(大きく頷いて)西淀川区も徐々にですが人口は減っているんですよ。西淀川区は東を淀川、西を神崎川、南を海に囲まれた特異な地形をした町で、都市部でありながら、地方的な要素もあるのかもと考えています。地方では病院がコミュニティの中心となっているところも増えているので、千船病院も同じような機能をもってもいいと思います。

【大﨑】ぼくは昔の商店街みたいなところを、スリッパ履いて、ぶらぶらするのが好きなんです。病院にそんな風に遊びに行ったら、お母さんがいて子どもが走り回っていたりする。そういう光景眺めているだけで楽しいなって思う。

病院という垣根が低くなると、病気の早期発見に繋がる。うちの母親もそうだったんですが、特に女性は、ぎりぎりまで我慢してお医者さんのところに行くという人が多い。

【吉井】早期発見は重要ですね。近所の方がちょっと病院を覗きにきて、ついでに検診を受けようかなっていう感じになれば、病気の予防、未病に繋がる。大﨑さん、色んなアイディアをありがとうございました。今後とも千船病院を宜しくお願いします。

【大﨑】こちらこそ! また来ます!

吉井 勝彦(よしい・かつひこ)
1959年兵庫県出身。1984年高知医科大学(現高知大学)医学部卒業、神戸大学医学部小児科学教室入局。神戸大学小児科の関連病院である公立豊岡病院、姫路赤十字病院、甲南病院、兵庫県立こども病院、千船病院に勤務。2018年愛仁会千船病院院長に就任。地域医療支援病院、地域周産期母子医療センター、大阪府がん拠点病院として、『医療を通じて社会貢献』の病院理念を実践し、次世代の人材育成にも注力している。福駅高架化に伴う工事を契機に始めた西淀川区との共創事業や、『医・食・住』、『幸福と健康』の街づくりにも精力的に取り組んでおり、地域の人から愛される病院づくりを目指している。
大﨑 洋(おおさき・ひろし)
1978年、吉本興業株式会社に入社。多くのタレントのマネージャーを担当し、音楽・出版事業、スポーツマネジメント事業、デジタルコンテンツ事業、映画事業などの新規事業を立ち上げる。2009年に代表取締役社長、2019年には代表取締役会長に就任。2023年6月代表取締役会長を退任。2023年5月大阪・関西万博催事検討会議共同座長に就任。また、公益社団法人「2025年日本国際博覧会協会」シニアアドバイザーも務める。
現在、一般社団法人 mother ha.haを設立し代表理事に就任。
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