2択問題でポイ捨てがなくなる

私と同じ愛煙家の読者は、この夏をいかがお過ごしだろうか。喫煙に対する風当たりは過去最高に厳しくなっており、街中で喫煙所を見つけるのもひと苦労だ。この酷暑の中で喫煙所を探して歩き回っていては、熱中症の危険もある。やっと見つけた喫煙所が屋外にあると、さらに熱中症のリスクが高まる。この夏はたばこを吸うのも命がけの暑さである。

テラス席の禁煙のマーク
写真=iStock.com/juststock
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どこかに安全にたばこを吸える場所はないか……と思っていたら、実にユニークな取り組みが見つかった。

喫煙所ブランド「THE TOBACCO」を運営するコソドが展開している「投票型喫煙所ASK THE TOBACCO」という事業である。灰皿に「同じ値段で買うなら田舎の100坪と都会の1坪どちらがいいか」「永遠の愛を持った一文無しと、永遠に孤独な億万長者ならどちらがいいか」といった二者択一式の質問が書かれていて、たばこを吸ったあとの吸い殻をどちらかの答えの下の穴に入れて「投票」するというものだ。灰皿はガラス張りになっており、どちらの答えが優勢なのか、誰でも確認することができる。

実にうまい手だと思う。答えても自分の得にならないとわかっていても、こうした質問が設けられていると、ついつい興じてしまうのが人間のさがだ。これは、行動経済学におけるナッジ効果を狙ったものだと思われる。

「nudge」は英語で「行動をそっと促す」という意味で、ナッジ効果とは、経済的なインセンティブや罰則などの強制力を使わずに、小さなきっかけで人の行動変容を促すことである。この理論を提唱したシカゴ大学のリチャード・セイラー教授が2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで関心が高まり、ナッジ効果を応用した事例が激増した。