職員のストレスに対処できているか
日本郵政グループのかんぽ生命保険では、営業目標のために顧客に対して保険の二重契約や、無保険期間が生じるような保険や、契約者の支払い能力を超えるくらい大量の保険を契約させるなどした不適切販売問題が19年に表面化した。ひどい例では、1人に対して54件の契約を結ばせていた例もあったようだ。朝日新聞の取材によれば、契約を結びやすい高齢者を「ゆるキャラ」「半ぼけ」「甘い客」などと裏で呼んでいたということも明らかになっている。
この問題は調査報告書の提出と、幹部らの処分によって鎮静化したように見えたが、22年には営業目標を達成するため、「インナー」と社内で呼ばれる自爆営業を促進するような施策が行われていることも報道されている。自分で自社の商品を買わなければいけないほど、プレッシャーをかけられている職員もいるということだ。これでは喫煙だけでなく、飲酒や過食でストレスを紛らわそうとする職員が出てくるのも無理はない。健康診断の結果にも悪影響が出ている可能性がある。
禁煙の前に、こうした職員へのプレッシャーのない組織づくりをする必要があるのではないか。そのうえで、禁煙を希望する社員が出てきたら手を差し伸べるのが、企業としてのあるべき姿といえるだろう。小泉純一郎元首相のもとで私もかかわった郵政民営化とともに誕生した日本郵政グループの動向については注目している。中身の薄い「禁煙宣言」などでごまかさず、経営の健全化に努めてもらいたい。