必ずしも自動車を買わなくてもいい未来

一方で自動車業界は、顧客にモビリティーを提供する上で、大きなイノベーションを起こしています。必ずしも自動車を買う必要はなく、移動手段を買えばいいというイノベーションです。そうすれば、自動車を購入するための資金を調達する必要がなくなるので、敷居が低くなります。(費用負担の)敷居を下げる革新的なリースもどんどん出てきています。日本市場はどうか分かりませんが、欧州市場では今、このようなことが起こっているのです。

自動車メーカーは、より実用的になっていくと思います。顧客がその時々に必要とするモビリティーを提供するのです。例えば、小さなクルマが必要なときもあれば、旅行に行く場合など大きなクルマが必要な時もあるでしょう。こうしたサービスは、スマートフォンとも連携していくでしょう。自動車業界は、未来を考えています。

再エネの活用で電力問題もクリアできる

――EVが増えた場合、電力需要が増えることが予想されます。対応できるでしょうか。

それは、私たち全員の次の課題です。しかし、再エネは非常に安価です。再エネ設備の設置は、石炭火力発電所などを建設するよりも簡単です。もし私たちがソーラーパネルや風力タービンの産業を構築し、環境に優しい水素ベースの経済に移行すれば、経済活動のための他の選択肢がない砂漠のような場所で、太陽光や風力によって非常に安価に電気をつくることができます。そして、その電気を水素に貯蔵し、モビリティーに利用できます。

ソーラーパネルと電気自動車の充電
写真=iStock.com/SimonSkafar
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近い将来、世界は少なくとも今の3倍の電力を必要とするようになると思います。その電力をクリーンな方法でつくり上げることも、私たちの魅力的なチャレンジの一つです。それに成功すれば、クリーンな電力を低コストで確保できるようになります。

ご存じのように、日本と韓国では燃料電池の技術が急速に発展しています。ですから、水素も興味深い技術になっていくでしょう。また、電池の技術も急速に発展しています。今後はより軽く、より高性能で、循環型の全固体電池を造ることができるでしょう。これらのエキサイティングな開発は全て、私たちが正しい方向へ進むための助けとなります。