散歩は犬の腸内環境に好影響

もちろん散歩がまったく運動にならない、という意味ではありませんが、むしろ散歩とは飼い主さんとの絆を深める意味合いのほうが大きいと私は思っています。

散歩のメリットはそれだけではありません。

犬の腸内環境にも好影響を与え、健康寿命を延ばすことが期待できるのです。

犬ではないのですが、子豚の飼育方法と腸内細菌に関する、日本臨床免疫学会発表の論文があります。

子豚を飼育方法ごとに「外で自由に飼育している豚」「室内で飼育している豚」「個室に隔離して、抗生剤を毎日投与して飼育している豚」の3つに分け、腸内細菌の変化を調べました。

結果、外飼いの豚の腸内細菌が最もいい状態でした。腸内細菌の9割が健康にいい種類の細菌だったのです。

その次が室内飼いの豚、最後が抗生剤を与えた豚という順番でした。

これは豚での調査結果ですが、おそらく犬でも同じ結果が出ると思います。

かといって、ただちに犬を外飼いしなさいとまでは言いませんが、室内にずっといるより、適度に散歩に出て外の環境に触れたほうが、犬の腸内環境にとっては望ましいのです。

適度な散歩で犬の免疫力がアップする

犬は散歩中、あちこちのにおいを嗅ぎます。草や土のにおいを嗅ぐと、微生物などが直接、鼻に入ってきます。

長谷川拓哉『愛犬の健康寿命がのびる本 うちの子がずっと元気に暮らす方法』(青春出版社)
長谷川拓哉『愛犬の健康寿命がのびる本 うちの子がずっと元気に暮らす方法』(青春出版社)

免疫は粘膜で産生されます。

鼻も腸も粘膜です。免疫細胞と腸には密接な関係があります。

鼻の粘膜から微生物やさまざまな菌が入ってくれば、腸内細菌もその影響を受けるのではないかと考えられます。

適度に散歩させることで、犬の腸内環境が良くなり、免疫力のアップにつながるのです。

散歩を犬の運動のためにしている、犬のストレス解消のためにしている。

それも間違いではありませんが、「外の環境にふれること」自体が、犬の健康寿命にとって意義があるのです。

【関連記事】
【第1回】ドッグフードをそのまま与えてはいけない…愛犬の寿命を縮める「隠れ水分不足」の恐ろしさ
犬の陰茎は一度入ったらなかなか抜けない…メスが嫌がっても交尾が続く"独自のロックオン式"という進化
イヌでもネコでも金魚でもカメでもない…江戸時代の人たちがこぞって飼育していた意外な動物の名前
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
伊勢丹から脱走した熊が新宿で大暴れ…かつての東京で頻発していた「熊出没事件」の驚くべき真相