町の姿を変える観光業需要の急増

変化は単純に観光客の絶対量が増加したことにもよるが、これまで混雑現象と縁のなかった地域にまで浸透したことも大きい。それは一方では急速に増えた民泊や簡易宿所が住宅地の中に突如出現することで、他方では、ホテルの立地難で、小学校跡地などこれもそれまで観光客の浸透していない地域に立地することによる。

2010年以降、京都でのホテル客室不足が目立ち、ホテルの建設ラッシュが始まったが、JR京都駅の南側など数少ない開発可能な地域が埋められると、既存集積の中に入り込む形でビルの改装あるいは建て替えで充足されるようになった。そのターゲットの一つが明治以来の番組小学校の跡地あるいは小学校校舎の再利用である。現時点で、このような再利用は既に5件に上り、小学校以外の建築物の改修や再利用も目立つ。

このように観光客需要が急増することで町の姿、特に都心の表通りに面さない内側の地区で変容したものも多い。例えば、錦市場は今世紀初めころから急速に店舗が入れ替わり、それまで主流であった乾物屋、鮮魚・精肉店の多くが姿を消し、観光客向けの店舗に代わった。また、錦市場は料亭などへの卸機能を持つ商店も少なくなかったが、その多くで錦小路に面した店舗を観光客向けに改装したものが目立つ。今や錦の商店街はほぼそれまでの地元の商店街としての姿を失ったといえよう。

小規模ラグジュアリホテルの建設増加

観光業の土地利用に関して見逃せないのが京都固有で、しかも不足が叫ばれて以降の急速なホテル建設にみられる傾向である。それは、ホテルの建設予定地や候補地がいずれも狭隘で、その多くが既存建築物の改築や再利用を目指すものであることによる。

都心の再利用で目立つのが、小規模のラグジュアリホテルの建設だ。これらの高級ホテルの多くが海外高級ホテルブランドの京都進出であり、客室数が100前後のものが大半である。