「同調性」と「共感力」は必ずしも一致しない

知能が高く、好奇心が強く、外向的で誰とでもきさくにつき合い、堅実で約束を守り、おまけに楽観的で精神的に安定しているのはものすごく魅力的なパーソナリティ(人格)で、社会的・経済的に成功するのはだいたいこのタイプだ。でも内向的だとダメなわけではなく、組織を引っ張るリーダーにはなれなくても、研究者やエンジニア、開業医、カウンセラーなど1人でできる専門職に向いている。アメリカの調査では、裕福なのは外向的な営業マンではなく内向的な専門職だ。

人間は社会的な生き物として組織に同調するようにつくられているが、それでも一匹狼のような生き方を好むひとはいる。でもこうした「同調性」の低いタイプが、「共感力」が低いとは限らない。組織に徹底的に服従・同調するが他人への共感力がないひと(男に多いだろう)もいるだろうし、組織に属さずフリーランスとして働きながら家族や友人に深い共感を示すひと(女に多いだろう)もいるだろう。

「EQ(こころの知能指数)」は共感力の指標で、複雑化する社会ではますます重要になっているとされる。とはいえ、スティーブ・ジョブズのような「天才」はたいてい極端にEQが低い。他人の気持ちや常識など気にしないから、誰もが驚くような創造(イノベーション)が可能になるのだ。

FBの「いいね!」の数で性格がわかる

「君がどんな人間かはビッグファイブでわかる!」といわれても、「そんなの性格占いとどこがちがうの?」と思うかもしれない。というか、つい最近までぼくもそう思っていた。

でも、そんな疑いを覆す事件が起きた。トランプがヒラリー・クリントンに勝った2016年のアメリカ大統領選で、トランプ陣営がSNSのデータを不正に使って選挙活動を行なっていたのではないかと大騒ぎになった。フェイスブックの「いいね!」からユーザーの性格や政治的立場を予測して、もっとも効果がありそうなグループに広告を流していたというのだ。

ジャーナリストたちが調べてみると、どんなニュースやコメントに「いいね!」しているかだけで、年齢や性別などなにひとつ知らなくても、ユーザーの性格が判断できることがわかった。それも、信じられないような正確さで。

この方法を開発した研究者によると、相手がどんな人間かを予測する能力は、「いいね!」の数が10で同僚、70で友人、150で両親、(わずか)250で配偶者を超えるという。その方法もものすごくシンプルで、ビッグファイブを使った標準的な性格テストの結果を大量に集めて、それと「いいね!」の関係を統計的に解析しただけだ。