「イートイン」があるコンビニが新たなライバル

「目指すのは、『地域に根差した、人々に愛される飲食店』です。そのためには、『待ちの営業』ではなく、『売り上げを自ら取りに行く営業』を心掛けています。その意味ではライバルは他のファストフード店ではなく、地元の個人飲食店であり、あるいは1万店を超すコンビニエンスストアだともいえるでしょう」

台湾は日本以上のコンビニ天国ともいえる。現在、台湾セブン‐イレブンは6379店舗(2021年12月時点)、ファミリーマートは4000店舗(2022年2月時点)ある。「全体として1万店を超える規模になってくると、100メートル歩けばコンビニに出会うようになります」(福光氏)。その多くは充実したイートインスぺースを持ち、飲料、菓子、食事などラインナップを充実させている。

「小腹がすいたら『ファストフードに行こう』ではなく、『コンビニで食べよう』という新たな選択肢になってきています。しかも涼しい店内で、その場で温めた食事をとれるとなれば、これは強力なライバルですよね」

日本流の接客を台湾でも

現状、景気の良い話が続く台湾モスバーガーだが、人件費やエネルギー価格の高騰、人手不足など、ビジネスを取り巻く課題は日本と同じである。特に人材の流動性が日本より高い台湾では、優秀なスタッフは、自らのステップアップを目指し数年で退職することも多い。

「日本のモスバーガーは約8割がフランチャイズ店で、オーナーさんも数十年単位でモスに関わってくださいます。しかし、台湾は基本的にすべて直営店です。だからこそ人材育成には力を入れ、出店攻勢と同時に、大規模な研修センターで、製造・接客・仕込み・サービス・企業理念まで、細かい教育指導を行ってきました。

その甲斐あり、優秀な人材が育ちますが、残念ながら離職率・転職率が非常に高い国です。これはファストフード業界に限った話ではありませんが、意欲ある若者たちは、転職していくことでスキルアップを実現していきます。その分、他からも優秀な人材が転職してきますが、だからこそ常に選ばれ続ける職場である必要も」

日本の飲食・小売業でも、少子高齢化や人口減少で、働き手も消費者も先細りしている。台湾モスの「攻めの営業」「地域に根差した存在」のキーワードは、一つの思考のカギとなるかもしれない。

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