中国人にとって不動産は「ガチャ」の象徴

自らの「階層」を変えることもできるが、そこには、自分より「階層」が上の人と結婚するとか、一流大学に入学して、有名企業に就職するなど「階層」の異なるステージに這い上がるしかない。あるいは、何らかのコネを掴んで、海外留学し、そこで自分の「階層ロンダリング」をして、本来の「階層」を帳消しにするしかないのだ。

深刻な問題だが、彼らにとって、自分がどの階層の出身なのかを最も痛感させられるのが、不動産を入手するとき、といってもいい。中国人にとって不動産は非常に大事なものだが、それすらも、お金ではなく階層の問題で買えない人が大勢いるからだ。

別の言い方をすれば、いま問題となっている不動産不況によって、中国人の間に以前からあった階層や格差が改めて浮き彫りになったともいえる。日本人の目にはまったくわからないことだが、中国恒大集団の本社前で抗議活動をしている人々の多くは、中国の「階層ガチャ」で不運だった人々だ。

農村戸籍の人は大学進学や就職でも不利になる

以下、具体的に説明しよう。前述の通り、中国では、出身地(戸籍)などによって、たとえ不動産を買うお金があっても、買うことができないという問題が存在する。どういうことなのかというと、政府が長年、都市部を優遇し、人々を都市戸籍と農村戸籍に分けて扱ってきたからだ。

簡単にいえば、大都市の人は生まれながらにして都市戸籍を取得し、不動産を買うだけでなく、大学進学、就職などの面でも優遇されるが、農村戸籍の人は優遇されないということだ。

彼らはそのまま農村に住んでいれば問題ないのだが、彼らが都市に移り住んだ場合、問題が生じる。一時的に都市の戸籍(都市生まれの人が持つ都市戸籍とは異なる団体戸籍と呼ばれるもの)には入れてもらえるものの、生まれながらに都市戸籍を持っている人々とまったく同じ扱いではない。

つまり、簡単にいえば、同じ上海市に住んでいるのに、上海生まれ、上海育ちで都市戸籍を持つ人々は上の階層の人、地方出身で上海に移り住んだ人は下の階層の人、として扱われるということだ。

もう少し具体的に説明すると、以下のようなケースがある。