「日本のバブル崩壊の再来」とは違う

中国の不動産不況が深刻化している。2021年に中国恒大集団が経営危機に陥って以降、市場は低迷し続け、碧桂園も今年1月~6月期の連結決算で最終損益が489億元(約1兆円)の赤字に転落した。

この状況を見て、日本がかつて経験した不動産バブル崩壊の再来を見ているようだとの分析も多いが、不動産問題を含めて、日本人が中国を見る上で、日本とは大きく異なる点がある。それは中国の都市部と地方部には目に見えない格差が存在する、ということだ。

上海・浦東のマンション群
写真=iStock.com/yujie chen
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「そんなこと、わかりきっている」という読者も多いだろうが、それは日本人が想像する「格差」とは異なる。日本にも経済的、社会的などさまざまな格差があるが、その多くは経済的な問題に起因する。お金がないから大学に進学できない、お金がないから不動産が買えない、といったことが社会的な格差につながっている。

しかし、お金さえあれば、東京でも、大阪でも、不動産を買う条件は基本的に一律だ。その都市に住んでいなくても、誰でも平等に不動産を買うことができる。

だが、中国では、出身地(戸籍)などによって、不動産を買うお金があるのに、買うことができないという理不尽な問題が存在する。この点については後述するが、背景にあるのは「階層」の存在だ。

どの「階層」の親に生まれたかで人生が決まる

日本の福島第一原発から処理水が海洋放出された際、中国から日本に嫌がらせ電話をかけてきた人が大勢いて、日本人の対中感情は悪化したが、そうした行為を「中国人の恥だ」と冷ややかに受け止めている人々や、自ら寿司店に足を運んだ人々も大勢いた。

現に、9月最初の週末、上海にオープンしたばかりの「くら寿司」には大行列ができて賑わっていたというし、福島県の「会津ラーメン」を扱う店には「中国人が迷惑をかけて申し訳ない」という電話もかかってきた。

日本人の目には不思議に映るかもしれないが、これは巨大な国に、あまりにも「階層」やレベルが異なる人々が一緒に住んでいるからだ。「階層」は経済的な問題だけでなく、出身地、戸籍、学歴、情報格差など、あらゆることを含む。

もし中国人として生まれたら、どんな階層に生まれたかによって、人生はスタート地点から、大きく異なってしまう。そもそも、どこ出身の、どのような「階層」の親に生まれたかが大きな問題で、その子どもは、自らの努力ではどうしようもないことが多いからだ。

むろん、日本にも「階層」は存在するし、「親ガチャ」という流行語も生まれたが、これも、日本では経済的な要因が大きいだろう。しかし、中国では、前述の通り、出身地、戸籍、学歴などの問題が根底にある。