普段はレシピ本に手を出さない男性も購入した

が、この本の最大のポイントというか、読みどころは、実際に利用している社員たちが顔写真、部署、年齢を公表して体重の変化を証言するページ。なかには21キロも減量できた男性社員が体験を語り、ダイエット定食としての信頼性を高めている。

体重計シェアで世界トップに立つメーカーの脱メタボ定食と聞けば、ダイエット好きな女性のみならず、肥満を気にしている男性の関心を引かないわけはない。普段はレシピ本には手を出さない男性たちも購入したから、542万部という驚異のベストセラーになったのだろう。

2006年5月、「日本人中高年男性の二人に一人は、メタボリックシンドロームの有病者あるいは予備軍」と厚労省が衝撃的な発表をし、メタボ健診がスタートして以来、男性のダイエット熱は加速度的に高まっていた。

メタボ健診でウエストを測る人
写真=iStock.com/FredFroese
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メタボリックシンドロームへの関心の高まりがヒットを生んだ

体脂肪計タニタの社員食堂』が男性読者を獲得した背景には、メタボリックシンドロームへの国民的関心があった。健康機器メーカーのタニタには、社員がメタボではまずいという暗黙の了解があるという。そんな「脱メタボ会社の脱メタボ定食」と聞けば、メタボに悩む男性諸氏の興味を引かないはずはない。

太っ腹なことに、タニタは印税を辞退したという。だが、この本の大成功により健康的なダイエットの代名詞となって社名をだれもが知るようになった。「タニタ食堂監修」のブランド食品がたくさん発売されたり、東京・丸の内にだれでも利用できる「タニタ食堂」が開設されたりと、経済効果は印税収入をはるかに超える大きさだったのではないだろうか。

肥満やデブ、ポッコリおなかの同義語としてメタボが流行語になって、新語・流行語大賞のトップテンに入ったのは2006年。2008年4月からは40歳~74歳のすべての国民に「特定健診・特定保健指導(通称「メタボ健診」)」が義務化された。