厳しい環境で「結果を出すチーム」はどこが違うのか。2015年ラグビーW杯で日本代表を率いたエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は「目上の者に常に従順であってはいけない。不測の事態に備え、自分で考える力をつけるために、時には健全な対立意識も必要である」という――。

※本稿は、エディー・ジョーンズ『LEADERSHIP』(東洋館出版社)の第7章「対立があるのは健全なこと」の一部を再編集したものです。

大人しく従順なチーム内に対立意識を生ませる

2015年に日本代表をワールドカップの準々決勝に進出させるというありえない目標を立てたとき、最も苦労したのは、それまで大人しく従順であることが当たり前だった日本の選手たちに、健全な対立意識を持たせることだった。

エディー・ジョーンズ (ラグビー指導者)(写真=Flickr: Auction/CC BY-SA 2.0/Wikimedia Commons)
エディー・ジョーンズ(ラグビー指導者)(写真=Flickr: Auction/CC BY-SA 2.0/Wikimedia Commons

日本には目上の者の命令に従う文化がある。しかし、目標を明確にした以上、選手たちには安住することをやめてもらわなければならなかった。それまで穏やかで秩序だったチームに、対立を持ち込む必要があった。

あるとき、私は夜にチームルームで重要なミーティングを行うと選手たちに告げ、開始時間を知らせた。私たちは選手たちが時間を守り、私や他のコーチたちよりも2、3分早く集まるだろうと予想した。従順な彼らは、開始時間の5分前には集合し、いつもの場所に座ると、ミーティングが始まるのを待っていた。

私は別の場所からその様子を見守っていた。他のコーチたちとともに数時間前に隠しカメラをセットして、選手たちの様子を撮影していたのだ。はじめはみんな無言で静かだった。10分後、時計を見て時間を確かめる者がちらほら出始めた。私はキャンプで携帯電話の使用を禁止していた。

そのころ選手たちはまだ、携帯電話をいつ、どのように使うべきかをよく理解していなかったからだ。携帯電話で気を紛らわすこともできず、正式なミーティングが始まるという窮屈な思いをしながら、彼らは次第に落ち着きをなくしていった。