W杯への執着に負けた苦い過去

その12年前の2003年にオーストラリア代表での仕事を続けると決めたとき、私は新たなビジョンを描くよりも、チームのオペレーション面の改善に時間を多く費やした。ワールドカップ優勝に執着し、最終目標に関してもそのことで頭がいっぱいだった。チームのプレースタイルを根本から変えることが、このビジョンの実現につながると確信していた。

攻撃重視のアタッキング・ラグビーを再定義し、ランニングゲームとキッキングゲームを融合させようとした。ワールドカップまでの4年間で、オーストラリアは2003年当時のランニングゲームから、2007年の大会ではキック主体のゲームをするようになっていた。この大会では、最高で1試合に95本もキックを使っていた。

つまり、我々は正しい方向に進んでいた。2004年のオーストラリア代表のフォーメーションは、今では多くのチームで採用されている。スティーブン・ラーカムが10番を付けていたとき、チームは成功していた。しかしその後で低迷してしまった。問題は、チームやビジョンというより私自身にあった。2003年のワールドカップ決勝でイングランドに大接戦の末に敗れたことを、私はまだ悔やんでいた。

そして愚かにも、4年間のサイクルで最高のチームをつくり上げることではなく、2007年のフランス大会で勝つことばかり考えていた。私は、ワールドカップへの執着に負けたのだ。この苦い経験から、私は戦略を超えて、リーダーシップの次の3つのフェーズにさらに力を入れる必要があることを学んだ。

・適切な人材の発掘
・オペレーション
・マネジメント

自分がどこに行きたいかより、組織がどこに行くべきか

またこの失敗の後、無私のビジョンが必要であることも理解した。リーダーは、自分がどこに行きたいかではなく、組織がどこに行くべきかを重視すべきなのだ。リーダーの個人的な最終目標と、組織全体としての最終目標は別物だ。

私はオーストラリア代表を再び率いた2004年と2005年、その違いに気づけるだけのリーダーとしての経験がなかった。それだけに、2007年に南アフリカ代表のチームアドバイザーになり、チームが世界チャンピオンになるのを経験できたのは幸運だった。極めて優れたチームがどのように運営されているかを目の当たりにできたし、簡単に修正できるようなポイントもいくつか指摘できた。