親の影響で育つ理数系人材

――どんな教育方針を掲げているのですか?

IISJでは、生徒たちの思考や行動に国際性を持たせたいと考えています。将来、子供たちが彼らにとって良い仕事に就けるように教育し育成したいのです。そのために必要な基本的、本質的、かつ時代の流れや現実に即した実用的な教育を提供しようとしており、何が必用かを日々考えて実行しています。初等、中等教育の段階では、子供たちは親に頼っても当然ですが、高校卒業後には、精神的に自立できるようになることも目指しています。

多くのインド人生徒は、自分の将来のキャリア、例えば、IT技術者、医者や研究者になりたいなどという明確な志望、意志を持っています。その背景には、自分の将来について両親との会話が多いからだと感じています。多少の親からの押しつけも含めて、そこには両親の希望や子供への期待の影響が大きいことは間違いありません。おそらく生徒たちの進路希望の80%くらいには親の意思が反映されているように思います。

また、最近のインド人の親は、自分の子供にはコンピューター、ITなど理工系キャリアを勧める傾向が強いのも特徴です。IISJでもコンピューターサイエンスを含む理数系の教育に力を入れています。だから、インドの学校には理数系に強い生徒が多く育つと思っています。

50年前にはインド人スクールはなかった

――なぜインド人学校の設立を思い立ったのでしょうか。

私は世界遺産のタージマハル遺跡で有名なウッタルプラデシュ州アグラで生まれ、デリーで法律を学び弁護士になりました。結婚後、夫の仕事の都合で日本に移り住みました。50年ほど前のことです。日本ではインドの弁護士資格では仕事ができないため、夫に言われて教師の資格を取得しました。

来日後、私たちには3人の子供が生まれましたが、当時の日本には私たちのような日本で働くインド人夫婦の子供を通わせるような学校はありませんでした。私はNHKで30年ほど働いていましたが、当時は、日本に来て働いていた若いインド人IT技術者などには集う場所がなく、私が彼らの母親代わりになって自宅に招いたりして面倒をみました。

ちょうどその頃、日本でもようやくインド人学校を設立する動きがあったので、私もそれに参加しました。学校設立の手続きや、カリキュラム作成など、全てをゼロから初めて体験しました。その後しばらくはインターナショナルスクールで教師として勤務したのですが、より多くのインドの若者を自分自身の経験を生かして支援するために、自分自身で学校を設立しようと決意したのです。