インド人抜きにして世界の成長は語れない

米国のIT産業は、なぜ世界最大になったのか。ひとつの要因は「インド系人材の活用」だろう。グーグル、マイクロソフト、IBMなど世界有数のグローバル企業のトップがインド系人材なのは偶然ではない。米国のIT産業の発展はインド人抜きでは語れない。

筆者はビジネスを通じて40年間インドと関わり続けてきた。インド人には、一見身勝手にも見える自由でアグレッシブな思考が備わっている。それは、多くの典型的な日本人に決定的に欠けている要素だ。

例えば、インドでは混雑した都会の道路を赤信号で横切ることは当たり前(というか、そもそもインドには信号機がほとんどない)で、走ってくる自動車との距離感を自分で判断して自由に車の間をすり抜けていく。その一方で、日本人は車が全く走っていない深夜の交差点の赤信号で立ち止まり、信号が青になるまでじっと待っている。

こうした日本人のメンタリティはインド人には驚きであり尊敬の対象でもあるが、単純な時間の無駄とも見られている。

信号無視を正当化するつもりは毛頭ないが、まるで正反対の性格や文化的背景、行動・思考パターンを持つインド人と日本人が、それぞれの特徴、強みを生かして協力、協働できたらどうなるだろうか。

日本のIT産業の成長にも優秀なインド人材の確保が欠かせないのは言うまでもない。しかし、法務省の調査では、国内における在留インド人数はいまだに5万人に満たず、中国、韓国、ベトナムなどに比べると圧倒的に少ない。

いったいなにが足りないのか。東京都江東区にある日本最大級のインド人学校「インディア・インターナショナルスクール・イン・ジャパン(India International School in Japan:IISJ)」の創業者であり校長でもあるニルマル・ジャイン氏に聞いた。

IISJの教室
撮影=プレジデントオンライン編集部
IISJの教室

日本で働くインド人の子供のための学校

――IISJについて教えてください。

IISJは、日本で働くインド人IT技術者などの子供の教育支援のために、2004年に設立したインターナショナルスクールです。現在は横浜と東京(江東区)にキャンパスがあり、日本の幼稚園から高校3年生に該当する12年生までの生徒が通っています。設立当初は27人の生徒しかいませんでしたが、現在は東京には900人、横浜には400人、合計1300人の生徒が在学しています。

IISJは、インドではメジャーな教育基準であるCBSE(Central Board of Secondary Education:中央中等教育委員会)に準拠しています。CBSEは、インド人であれば誰でもよく知って慣れており、インドから来た生徒にも、また、将来インドに帰る予定の生徒にも有効な基準なので採用しています。

IISJは営利ビジネスとして運営しているのではなく、日本で働く多くのインド人IT技術者などの子供の教育を支援することが設立時からの最大の目的なので、あえて日本の教育基準に準拠してまで学校の規模を拡大するつもりはありません。当校ではインドの学校でも利用されている国際バカロレア(IB)も認定されていますが、一般的なインターナショナルスクールと比べ相対的に安い授業料で国際的な教育機会を提供していることも特徴のひとつです。

ニルマル・ジャイン氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
ニルマル・ジャイン氏