生徒数を増やすことで優秀なインド人技術者を増やす

――IISJにはどのような子供たちが通っていますか。

1300人の生徒のうち、日本人は約5%です。日本人生徒の入学希望は増加傾向にありますが、「日本で働くインド人の教育支援」という設立の趣旨に基づき、インド人の入学を優先せざるを得ない事情があります。自分の子供を通わせる学校がないと、インド人だけでなく優秀な外国人は日本で働きたいとは思わないからです。

IISJでは、インド、日本以外にも、バングラデシュ、パキスタン、ネパールなど南アジア諸国からの生徒も受け入れています。それらの国は、基本的な教育の制度がインドと似ているからです。IISJの授業は全て英語で教えていますが、その他に、ネパール語、ヒンディー語、タミル語、日本語、フランス語の5カ国語を教えています。

インドの教育基準であるCBSEでは、母語に加えて現地語や外国語を習得するように定められています。例えば、ムンバイであれば、英語やヒンディー語に加えて、マハラシュトラ州の言語であるマラーティー語も学習します。それゆえ、日本では日本語を学習するのは当然なのです。

インド人は言語習得においては強みを持っており、多くのインド人は3~4言語、あるいはそれ以上の言語が理解できます。また、日本語とヒンディー語は構文や文法が似ているので、インド人にとっては比較的簡単に日本語を習得できます。外国語の習得に関しては、5年生までは会話が中心で、6年生になってから文法やライティングに力を入れます。その方が言語の習得が早いからです。

最近では、日本で働くインド人は着実に増えており、IISJへの入学希望者も増えています。現在は日本政府に生徒数の増枠を申請しているところですが、入学待機者は多数います。入学できない生徒たちには、当面の学習支援として、オンラインでの教育を提供しています。

IISJの授業風景
撮影=プレジデントオンライン編集部
IISJの授業風景

70%の生徒が理工系を志望

――IISJでは教師はどのようにしてリクルートするのですか。

教員はインドで探すこともあり日本でリクルートすることもあります。インド大使館も協力してくれています。IISJの生徒の父親の半数以上はIT技術者で、IT企業や金融機関、自動車関連企業などで働いています。彼らの妻は、比較的高い教育を受けており、教師の資格や経験、さらに修士号や博士号を持つ人もいます。

私自身もそうですが、インドの女性は、結婚後の仕事として教師の資格を取得することも多く、このような女性をフルタイムやパートでも採用できるのです。結婚した女性にとって、教師の仕事はとても良い仕事なのです。

――IISJの卒業生の進路はどうなっていますか。

生徒の約70%は理工系を志望しており、ビジネス、商業系の志望は30%程度と少なめです。多くの親は、理系の方が子供の将来が明るいと考えているようですが、最近では、ビジネス、ファイナンス分野の職業の人気も少しずつ高まってはきています。いずれにしても、人生経験の長い親の意見は子供の将来にとって重要なアドバイスとなり、両親との会話が多い子供たちは、そのことを理解しており、親の意見を尊重しているように見えます。それが親子の絆でもあるのです。