駐在員を困らすわがままな政治家たち

パリ駐在員が一番困るのは、視察議員などから法外な値段の食事を期待されることだった。ロンドンでは中華料理、デュッセルドルフでは日本レストランで満足しているのに、パリでは数倍の値段のフランス料理を望む。しかも三つ星レストランでないと嫌だとか、昭和天皇が召し上がられたのと同じメニューにしろとか注文を付ける。

また、「ワインは自分に決めさせろ」と言って超高級ワインなどを注文されると予算が超過し、後始末が大変だった。高級店に相応のマナーを知らない政治家を連れて行くと、店との関係を悪化させかねないから、個室に押し込めたりもした。

赤ワインで乾杯
写真=iStock.com/Instants
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そして、ショッピングでも「家族から頼まれたレア商品を探せ」とか、金持ちなのに免税手続きには熱心で、書類に不備があったり、他人にプレゼントしてしまって購入品を税関に見せられず、免税してもらえないとかで、空港で騒動になることもしばしばあった。

もちろん、中身のある視察をする人も多いし、パリの素晴らしい町並みや、人々の楽しそうな生活、文化水準の高さを実感するだけでも有意義なことではある。食事の時などにフランスの何が日本の将来の参考になるか説明したら、何年かして「あのときの解説は勉強になって私も考えを変えた」などと言われると嬉しかった。

「視察は6時間だけ」という批判には悪意がある

しかし、楽しい写真を見せたり、帰国して土産を配り歩いたりする人も多いから、パリへの視察旅行というと観光だろうと決めつけられやすい。あの写真がエッフェル塔でなく、万里の長城やホワイトハウスの前なら批判は少なかっただろう。

さて、自民党女性局の視察日程が本当に不適切なものだったかを分析しよう。到着と出発の日を除いた2日間で、松川議員などが参加したのは、3つの会談(省庁担当者、国民議会議員、元老院議員。いずれも女性)、2つの講義聴講(フランスの団体職員と在仏日本人の評論家)、2つの視察(保育所と元老院。元老院ではレクチャー付きのガイドツアー)、大使公邸訪問、大使主催のディナー(大使や館員との意見交換含む)である。

実質2日間でこれだけの内容を入れていれば、まっとうな視察だと評価できる。移動時間や会談延長、予定変更に備えた予備時間も必要なので、1カ所で順次会談する場合でなければ、これ以上詰め込むことは普通はしない。「視察は6時間だけ」という指摘は、悪意のあるこじつけである。