収入を増やすにはどうすればいいのか。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士は「現在の教育では、雇われ仕事に就くというマインドセットが刷り込まれており、本来持っている創造性が発揮されなくなっている。人間は生まれついての起業家であることを意識してほしい」という――。(聞き手=国際教育評論家・村田学)(後編/全2回)
ムハマド・ユヌス博士
撮影=堀隆弘
ムハマド・ユヌス博士

「仕事を見つけろ」というアドバイスは完全に誤り

前回からつづく

――ユヌス博士がおっしゃるようにビジネスコンセプトを変えていけば世界は変わると思うのですが、そうはならないのはなぜでしょうか。

金融システムに問題があるというお話をしましたよね。金融システムが貧しい人々に門戸を開かないのです。

さらに、経済システム全体が「生きていくためには雇われの仕事を見つけなければならない」という考えで作られているということでしょう。仕事を見つけさえすれば、金を稼いで家族の面倒を見ることができるというわけです。

でも私は以前から、仕事(勤め先)を見つけなさいと人々に迫るのは完全に間違った考え方だと指摘してきました。人は独立した存在であり、他の誰かのために働くために生まれてくるのではありません。人間は無限の創造的な能力を持って生まれてきます。

ただしその能力は、他人のために働いていては使われません。学校に行って、大学に行って、学位を取って働き口を見つける。でも働き口が見つかれば、あなたの創造性やいろんなものは使われないままになってしまいます。なぜなら(雇われの)仕事に就くということは命令されて働くことだからです。命令に従うだけで、独自のものを作り出すことはありません。