人は生まれながらに起業家である

――起業家が増えていくことが一番大事なのでしょうか。

人間は生まれついての起業家です。

だから教育を与える場合も、雇われ仕事に就く準備をさせるのではだめなのです。教育は、若い人を雇われ仕事ができるように育てるシステムになってしまいました。これは誤った教育です。教育システムは若い人たちを起業家になれるように育てるべきなのです。

マインドセットはとても重要です。これは教育システムによって頭に刷り込まれるのですが、いまの教育システムというのは、どこかの会社のどこかのオフィスのよき従業員を育てるためのものになっているので、そういったマインドセットになってしまう。

私に言わせれば、誰かに仕えるために働くことは奴隷制度の遺産です。人の下で働くことを受け入れた瞬間、創造的な能力は不要になってしまいます。

学校は教育を担う一方で、若い人々に銀行を紹介する役割も担うことになるでしょう。彼らが事業案を思いついたら銀行から金を出してもらう。そうすれば学校にいる間から事業を始めることができます。「すべての人は起業家である」とみんなが考えることができれば、これは本物の教育システムになるでしょう。

経済学者のムハマド・ユヌス博士(写真右)とインタビューを行う国際教育評論家・村田学氏
撮影=堀隆弘
経済学者のムハマド・ユヌス博士(写真右)とインタビューを行う国際教育評論家・村田学氏

バングラデシュで生まれた女性起業家たち

そう言える理由は、バングラデシュでは1000万人の女性、字を読み書きできない女性たちが、雇われ仕事を見つけるのではなく自分で事業を始めるためにグラミン銀行から金を借りたからです。字を読み書きできない女性たちが100ドルだとか200ドルの借金で起業家になれるのですから、誰もが起業家になることができるのです。

つまり起業家になる力は誰にでもあるという命題に異議を唱えるべきではありません。答えはもう出ているのです。

資金を手にした瞬間に彼らは商売を始め、収入を得られるようになります。1つのローンを返済したら次のローンを借りてレベルアップし、成長していきます。