仕事の生産性を上げるにはどうすればいいのか。明治大学の堀田秀吾教授は「ひとつの仕事に集中して取り組む『シングルタスク』がいい。一度に複数の仕事をこなす『マルチタスク』がもてはやされているが、さまざまな研究で、ミスが増え、生産性が落ちることが明らかになっている」という――。

※本稿は、堀田秀吾『24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力』(アスコム)の一部を再編集したものです。

歩きながらスマートフォンを操作する人
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デジタル化で仕事がどんどん増えていく

デジタル技術が進化し、さまざまなことがボタン一つ、クリック一つ、タップ一つでできるようになった結果、私たちは当たり前のように、一度に複数の仕事をこなす「マルチタスク」を行うようになりました。

おそらくみなさんも、「複数の案件を同時並行で進める」「仕事相手の話を聞きながらパソコンで入力作業をする」「歩きながらスマホでメールや情報をチェックする」といったことを、日常的にやっているのではないでしょうか。

人間の脳の作り自体は20万年前とほぼ変わっていないにもかかわらず、処理しなければならない情報が加速度的に増えていること。

特にネガティブな情報の量が増えたために、将来に対する不安や懸念が大きくなり、「原因となるものを取り除いたり、乗り越えたりするための行動を起こし、不安を解消しなければ」といった意識が働いて、ますます人々が「やらなければ」と思うことが増えていること。

社会のスピードが速く、人々が常に多くのことに気をとられ、「あらゆることをできるだけ早く終わらせなければ」という思いに駆られていること。こうしたことが、今のマルチタスク社会の背景にあります。

人間の脳はマルチタスク用にできていない

現代社会で働く多くのビジネスマンが、「より多くの情報を処理し、多くの仕事をこなし、生産性を高めるためには、マルチタスクが不可欠であり、一度に一つの仕事だけを行うシングルタスクは効率が悪い」「同時に複数のことをやることで、限られた時間でより多くの課題を解決することができる」と考えているはずです。