仕事を2.8秒中断するだけで集中力は崩壊する

そして、カーネギーメロン大学のジャストらの研究では、集中力が散漫になると、人間の「情報を符号化する能力」に負担がかかることが明らかになっています。

運転しながら誰かが話しているのを聞いているドライバーの、脳のMRIを撮ったところ、注意力が37%も低下していることがわかったのです。

さらに、ミシガン州立大学のアルトマンらの研究では「300人の学生に、パソコンで集中力が必要な作業をさせ、その途中でさまざまな秒数の広告のポップアップ画面を出して作業を中断させる」という実験を行い、どの程度の時間で学生の集中力が途切れるかを調べました。

その結果、ポップアップによって作業が2.8秒中断されると、ミスの発生率が2倍になり、4.4秒中断されると、ミスの発生率が4倍になることがわかったのです。

今、やっている作業が2.8秒妨げられるだけで、生産性は半分に低下するのですから、複数の作業を並行で行うマルチタスクで生産性が上がるはずがありません。

マルチタスクで、生産性が40%低下、作業ミスが50%増加する

ワシントン大学のメディナは、マルチタスクをする人には次のようなことが起こると指摘しています。

・生産性が40%低下する
・仕事を終えるまでにかかる時間が50%増加する
・ミスの発生が50%増加する
・創造性が大幅に低下する

また、スタンフォード大学のオフィールらの研究では、マルチタスクを行うと記憶に干渉が起き、正しく記憶できなかったり、課題の切り替えがうまくいかなかったりすることがわかっています。

さらに、ユタ大学のワトソンとストレイヤーが100人を対象に行った、運転をしながら音声課題をこなすというマルチタスクの実験では、マルチタスクをした場合としなかった場合で、パフォーマンスに違いが出なかった人はわずか2.5%だったとのことです。

目の前にある一つのことに取り組むほうがいい

マルチタスクを行っていると、短期的には快楽を感じ、満たされるかもしれませんが、それは目の前のことに集中する脳の使い方とは異なります。

マルチタスクにより、大量の情報を処理しテクノロジーを使いこなすことに価値を感じるようになればなるほど、人は情報への依存を高め、長期的な視野を持つことや内省的な思考ができなくなります。

マルチタスクを行う人もまた、情報を追う獣なのです。

このように、マルチタスクはさまざまな形で私たちから集中力を奪い、心身の不調をもたらし、パフォーマンスを低下させます。

真に生産性を高めたいと思ったとき、私たちが心がけるべきなのは、今、目の前にある一つのこと、シングルタスクに集中することなのです。