「親に大切にされなかった」という傷を抱える愛着障害タイプ

私たちは、まだ物心つくまえから特定の誰かとの深い絆を必要としています。

多くの場合、母親がその最たる対象です。あかちゃんは生まれてすぐに母親を求めます。泣いていても抱っこされれば泣きやんでぎゅっとしがみつき、肌のぬくもりに安心してすやすやと眠りに落ちる――。

赤ちゃんを抱き上げた母親
写真=iStock.com/kohei_hara
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母と子は日々互いに触れ合うことによって信頼関係を築き、そこに「基本的信頼」という特別な絆が生まれます。

生後数カ月から約3歳ごろまでのあいだにつくられる、この「特定の人に対する情緒的な絆」を、医学的には“愛着”と呼びますが、そうした絆を乳幼児期に得られず、愛着に傷を抱えているのが愛着障害タイプの人たちです。

親が無関心、または過干渉だと心が弱くなってしまう

愛着障害の問題の中心にあるのは、乳幼少時期の親との関係によって、レジリエンス(回復力)がとても弱いままである、ということです。

レジリエンスが弱いと、さまざまな生きづらさや症状へとつながります。

愛着障害につながる保護者との関係

・親はあなたに無関心だった。
・褒められることがほとんどなかった。
・つねに「いい子」でいなければならず、感情を自由に表現できなかった。
・過保護あるいは過干渉で育てられた。
・虐待を受けていた。
・親の愚痴を聞かされたり、世話をさせられていた。
・いつもほかの兄弟姉妹やほかの子と比べられていた。
・しつけが厳格で、甘えることを許されなかった。

こうした生育環境が原因で、患者は「自分には愛される資格がない」「生きる値打ちがない」と感じている可能性があります。

幼い頃に大切な人から充分な愛を受けとれなかったために、「自分はここにいていい存在なんだ」という安心感を得られていないのです。その心の痛みがトラウマとなって、あなたのものごとのとらえ方や感情、対人関係などあらゆる面に影響を与えつづけます。

「自分を認めてほしい」と思うあまり、人に甘えたり頼ったりするのが極端に苦手だったり、「嫌われたくない」と思うために過度に気を使って疲弊してしまったり、人との自然な距離感がわからずに自己アピールしすぎてしまったり、そのせいで人間関係を壊して自己嫌悪に陥ったりしがちです。