60歳以降も働き続ける日本人が増えている。ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんは「シニア人材向けに3つの給付金があるものの、50代と比べて賃金が大幅にダウンすることを覚悟しなければならない。年金受給までに貯蓄を取り崩さなくてすむよう、50歳になったら家計の見直しを行ってほしい」という――。
通帳を見ている親子
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いまは60歳以降も働くことが期待されている

老後の経済的不安や年金受給年齢引き上げなどにより、60歳以降も働く人が増えてきています。厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査の概況」によると、一律に定年制を定めている企業のうち、定年を「60歳」とする企業は72.3%、「65歳以上」とする企業は24.5%でした。平成17年調査では「65歳以上」は6.2%でしたから、企業の制度整備も進んできているようです。

そんな中、7月17日には日経新聞が「60代社員に現役並み処遇 人手不足で役職重く」という記事で、60歳以上の社員の給与を倍増する住友化学など、シニア人材の処遇を改善しようとする各企業の取り組みを取り上げました。

背景には、バブル期世代がまもなく60歳定年を迎えることで、人手不足が深刻化する懸念が強まっていることがあるようです。

実際、60歳以降の雇用環境とはどのようなものなのか、現役世代のうちに必要な心構えとは何なのか、を解説したいと思います。

「65歳までの雇用確保」の本当の意味

「高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)」では、雇用する高年齢者に対して、65歳までの雇用確保を事業者に義務付けています。2025年3月31日までは年齢により対象者を限定できる経過措置が設けられていますが、同年4月以降は希望者全員の継続雇用が義務化されます。

65歳までの雇用確保というと、すべての人が65歳定年となったと考える人が多いのですが、実態はまったく異なります。同法が事業者に義務付けているのは、以下のいずれかの措置を講じることです。

1.定年制の廃止
2.65歳までの定年の引き上げ
3.65歳までの継続雇用制度の導入

具体的には、定年制度を設ける場合、年齢は60歳以上にしなければならず、労働者が希望するのであれば、65歳まではなんらかの形で雇い続けなくてはならないというものです。継続雇用制度とは、雇用している高年齢者を定年後も引き続いて雇用する「再雇用制度」「勤務延長制度」などをいいます。