現在、客に対するもてなし、ホスピタリティはますます重要になっている。小売店やサービス業は顧客確保のためにしのぎを削っているが、価格を安くするには限度があるから、固定客を増やすにはサービスの質を向上させなくてはならない。

スピーチの中に、「会場スタッフが寒い屋外にいた出席者に毛布を配って歩いた」というエピソードも。

スピーチの中に、「会場スタッフが寒い屋外にいた出席者に毛布を配って歩いた」というエピソードも。

コンビニ・チェーンのファミリーマートでは、朝礼のテーマを「もてなし、ホスピタリティ」に絞って一定の効果を挙げている。同社は創業した1981年から朝礼を続けているが、2005年からスタイルを変えた。「ファミリーマートらしさ」を追求した結果、あらゆる機会をとらえて、客へのもてなしを大切にする社内活動を始めた。

朝礼もそうした活動の一環であり、月曜から金曜までの毎朝、社員が交代で「自分が感じたもてなし」についてスピーチをする。

私が参加したのは本社総合企画部の朝礼だ。開始時間は午前9時ぴったり。チャイムと同時にひとりの女性が40名近くいる社員の前に出てあいさつをし、すぐにスピーチを始めた。彼女は声は大きく、姿勢も良かった。

「先週、私は友人の結婚披露宴に出席しました。そこで3つのもてなしに気づきました……」

披露宴の料理が和食か洋食を選択できること、しかもアレルギーのある人にはメニューを変える用意があったこと。会場スタッフがすすんで車椅子の披露宴出席者を介護していたこと……。どれも彼女が想像したよりも質の高いもてなしだったと述べ、そして「私たちもお客さまの期待以上のもてなしをしなくてはなりません」と総括した。それは外で体験したことを伝えるだけの、単なる言いっぱなしのスピーチではない。社内のもてなしの質を充実させたいという問題提起が含まれていた。

朝礼の時間はわずか5分。テーマをひとつに絞り込んだことが参加者に明確な目的意識を持たせたようだ。

(尾関裕士=撮影)