ここ数年の女性の活躍推進の影響が子育て世帯に対していかに大きな影響を与えたかを示すデータがある。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは「家事や子育ての外部サービスの利用に賛成する意見が圧倒的多数になった。4年でここまで顕著な数字の変化が出たデータを見たことがない」という――。

社会が女性に働くことを要望した結果

1980年代から連綿と女性のライフサイクルの変化を振り返ると、それは以下のような流れになることが、前回(「『職場から“いい男”が消えた』自分と同格かともすれば自分以下…結婚しない女性が急増した本当の理由」)わかりました。

◇1990年代半ばまでの晩婚化要因
見合い結婚の減少→恋愛結婚の増加→交際期間の長期化→晩婚化
不況→短卒一般職採用の減少→OLモデルの崩壊→女性の四大進学率上昇→出会い年齢の上昇→晩婚化
◇1990年代後半以降の晩婚・未婚化要因
OLモデルの崩壊→一般職採用の減少→社内「お嫁さん候補」の減少→社内結婚の減少
四大卒女性の増加→女性総合職採用の増加→勤続の長期化→年収・地位の向上→おひとり様

端的に言えば、不況と少子化により、社会は女性に「お嫁さん」になることよりも、「働くこと」を要望するようになり、女性たちがそれに応えた結果、晩婚・未婚化が高進し、少子化に輪をかけたということでしょう。

こうした「お嫁さん」から「労働」へのライフサイクルの変化は、人々の「心」も都合の良い方向へと変えていきました。今回はその状況をデータで振り返ることにいたします。

オフィスで働くビジネスパーソン
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「女は働くべきでない」は、もはや0.7%

まず、「女性はずっと働き続ける」ということが、すでに社会的コンセンサスとなっている状況を見てみましょう。図表1は、出生動向基本調査から、女性の労働についてどうあるべきか、の色合いを示したものです。

【図表1】女性は働くべきか

1992年の時点は、「結婚まで」「出産まで」「働くべきでない」の3つの合計が29.5%で、「育児期間は休み、復職」を抜いてマジョリティとなっていました。まさに、「昭和型OLモデル」の時代と言えるでしょう。

ただ、昭和型のこの3意見は退潮を見せ、2002年には「育児期間は休み、復職」が僅差でトップになっています。

その後、急速に「ずっと働くべき」が増加し、2012年に45.9%でマジョリティに、2018年には61%にもなり、そのまま6割前後を推移しています。世の中の圧倒的多数が「女性はずっと働くべきだ」と考えており、これに「育児期間を除いて働くべき」という意見を加えると、おおよそ9割にもなるのです。

【連載】「少子化 女性たちの声なき主張」はこちら
【連載】「少子化 女性たちの声なき主張」はこちら

そう、女性が一生働くという社会的合意がなされたといえるでしょう。

一方、「働くべきではない」は2022年にはわずか0.7%で、もはや絶滅危惧種、「結婚まで」も2.6%であり、寿退社(結婚退職)などという言葉は死語同然になっています。