民間企業のトップをNHK会長に起用するのはオカシイ

NHKの不祥事の深底から浮かび上がってくるのは、会長ポストに民間企業から放送界とは無縁の人材を3年交代で起用している問題がある。

生え抜きは橋本元一氏が最後で、08年以降、福地茂雄・元アサヒビール会長、松本正之・元JR東海社長、籾井勝人・元三井物産副社長、上田良一・元三菱商事副社長、前田晃伸・元みずほフィナンシャルグループ会長、そして現職の稲葉延雄・元日銀理事と、民間企業人の系譜が続いている。

日本特有の公民二元体制をとる放送界は、NHKと民放、さらに新聞など報道機関との微妙なバランスの上に成り立っている。そもそも営利を追求する一般企業とは存在理由が異なるため、民間企業の論理は通じにくい。経営面や組織面では民間企業で培ったノウハウが生かせる場面もなくはないが、限定的だろう。

大阪NHK放送センタービル
写真=iStock.com/Mirko Kuzmanovic
※写真はイメージです

とりわけ、受信料という財源を確保されているNHKは、公共メディアとして、報道機関として、一特殊法人として、多面的な顔を持つ特別な存在で、政権との距離にも留意しなければならない。

こうした放送界の複雑な力学に精通していなければ、巨大NHKを短期間で掌握するのは至難の業で、まして舵取りとなれば自ずと限界がある。メディア界や放送界が激変しているタイミングだけに、功なり名遂げた企業人が名誉職として引き受けるには荷が重すぎる。

NHKの無責任体質を改めるべきだ

本欄では、稲葉会長の就任時に、前途を不安視した(2023年1月27日付『朝ドラをや
めて受信料を下げたほうがいい…「太りすぎたNHK」には今すぐ分割・民営化が必要だ』

)が、早くも的中してしまったようだ。

ネット事業の基本ルールを軽視した前田・前会長に、きちんと国民や視聴者に意思決定の経緯を説明しない稲葉会長、その会長に引き立てられて追従する幹部たち、そして責任逃れに奔走する森下経営委員長……。蔓延するNHKの無責任体質は、何としても改めなければならない。

彼らに足りないのは、国民や視聴者のために存在すべきNHKへの強烈な愛情ではないだろうか。

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