税収の自然増をすべて少子化対策に振り向ける案

【桑田】そうねえ。少子化対策に恒久財源をという話があるけれど、現状、簡単ではないわよ。もちろん増税ができればいいけど、消費税は2019年に引き上げたばかりだし、法人税は、先に防衛費で追加負担の方向性が打ち出されていてなかなか難しい。そもそも消費税だけではなく、社会保険料も着実に上がっているし、賃金が増えない中で、さらなる追加負担を国民に強いるのは厳しいわよね。最近はインフレもあるし。

少子化対策に振り向ける財源確保に向けて、高齢者向けに偏りすぎている社会保障費を削減し、若者に振り向けるべきだという指摘がある。偏りがあることは確かで、少しでも若い人に手厚くすべきというのはわかる。でも、そうした議論が先行してしまうと、世代間対立の火種となり、逆に政治的に一歩も進めなくなってしまう可能性もあるわよ。

【藤波】そこで考えたのが、国の税収の自然増収分を少子化財源とするというアイデア。実際、最近、国の税収はかなり増えているけれど、税収のGDP弾性値は1.1とかいう数字があるじゃない。この10年ほどをみれば、名目GDPで年率1%くらいの経済成長率があるから、税収も毎年1%は増えると考えられる。

現在、国の税収は60兆円(2020年度決算)くらいだから、毎年6000億円ほど税収が増えることを見込んで、これを10年間少子化対策にあてるとすると、10年後にはようやく年間6兆円の財源が確保できる計算になる。増収分を他の施策に一切振り向けないというかなり強引な発想だけど、どうだろう。

社会保障費の増加に食われてしまう

【桑田】もちろん、政府がそういう方針を決めれば不可能ではないけれど、藤波さんがいう通り、増収分を子育て支援以外には一切振り向けないとなると、いろんなところにひずみを生んでいくことになるわね。

最も影響が大きいのが社会保障。2019年に消費税を引き上げたからといっても、社会保障財源に関する議論に決着がついたわけではなく、社会保障費は今後も増えていくと予想されている。過去10年間、名目GDPは年率1%ずつ増加したけど、同時期、社会保障費は年率でおよそ2%の伸びを記録している。社会保障に対する国の負担は、2022年には36.3兆円まで膨らんでいるので、これも2%増えると考えると年間7000億円の負担増となる。税収の自然増が6000億円あるとはいっても、既存の社会保障費の増加に食われてしまうわけよね。

右肩上がりに増える社会保障費
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社会保障費の伸びを経済成長率以下に抑える方針で歴代政権は取り組んできたけど、高齢者が増えている現状では難しい。高齢者向けに偏っている社会保障給付の見直しによって少しでも伸びを抑えていくという方針に誤りはないけど、本来であれば、社会保障の伸び以上に経済成長率を高めるほうが正解なんでしょうね。

【藤波】まあ、そうなるよね。