アップルやスタバのロゴは上部にあったほうがいい

商品のパッケージのデザインの際には、ロゴの配置も重要な決定事項でしょう。そのときのロゴの配置についても、商品の知名度によって場所を変えたほうがよいでしょう。載せる位置によって印象が変わります。

アパルナ・サンダーらの実験によると、アップルのような訴求力の高いブランドの商品だと、ロゴが下部よりも上部にあったほうが好まれました。反対に、あまり人気のないマイナーなブランドだとロゴが下にあったほうが好まれ、購買意欲も高まったのです。

これはテクノロジーの商品だけではありません。アメリカでも大人気のスターバックスも、ロゴが下部よりも上部にあったほうが好まれました。これも、「訴求力の高い」イコール「優れている」という抽象的な概念を「ロゴの位置」という具体的なもので比喩して理解しやすくしている、概念メタファー理論です。

「認知の流暢さ」があるデザインは受け入れられやすい

このように、商品や広告のビジュアルを考える際には「認知の流暢さ(cognitive fluency)」を意識することも非常に重要です。『行動経済学が最強の学問である』の中でも「非流暢性」で説明しましたが、「流暢」とは「ひっかかりがない」、つまり「わかりやすい(瞬時に認知できる)」ということです。

その意味で概念メタファー理論は、認知の流暢さを作り出す手法の一つです。「高い=パワフル」「低い=気楽」という概念メタファー理論を利用し、「認知の流暢さ(わかりやすさ)」があるデザインを作り出せば、それぞれ消費者に受け入れられやすくなります。

相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)
相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)

また、消費者の深層心理を理解することも大切です。面白いことに、この効果は、人が「自分は影響力がないな」と感じているときにはなくなります。これは、自分が「影響力がない」と感じている際は、ロゴが上にあることで無意識に示される「優位性や影響力」に流暢性がなく、ピンとこなかったからでしょう。

「AのデザインとBのデザイン、どちらが好きですか?」

この質問はマーケティングリサーチの定番ですが、このときにただの好き嫌いではなく、身体的認知のクセを踏まえて検証することが大事です。そうすれば、わかりやすく、自然に感じるデザインを選ぶことができます。またこうした行動経済学の知識を、プレゼンテーションの際に学術的なエビデンスとして示してもいいでしょう。

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