投資を前提にしない限り「ニセコ」にはなれない
④消費主体で「投資」の観点がない
ニセコは、他の多くの国内リゾートとは違い、外国人旅行者だけではなく、日本に滞在する外国人や、海外富裕層・投資家をも惹きつけている。そのため、インバウンドによる宿泊費など消費がゼロになっても、活気を失わなかった。パウダースノーのおかげで、国内外の富裕層顧客がスキーヤー・スノーボーダーとして集まり楽しむため、良質なホテルコンドミニアムなどが供給され、ブランド化が進み、資産価値の上昇により、外資系最高級ホテルの進出などさらなる開発投資が行われる、という、投資が投資を呼ぶ好循環が続いているからだ。
観光業で儲けるのは簡単ではない。はやりすたりがあり、特定シーズンや土日への集中、人手不足、人件費高騰、混雑に渋滞、地元住民との軋轢など、問題は山積みだ。交通、宿泊、食事、おみやげ、アクティビティなどで稼ぐものの、薄利多売であったり、売上に波があったりする。
こうしたインバウンドなど観光客の消費を前提とした観光推進策ではなく、投資を前提としたものにしない限り、「次なるニセコ」が現れることはないのではないか。
例えば、投資を呼び込む施策こそが大事であり、観光はその一手段にすぎないという考え方はできないだろうか、観光という万人受けする聞こえのいいスローガンを掲げるのではなく、本当に、雇用を生み、税収が増え、地域が潤うという観点から、考えるのであれば、必ずしも観光業にこだわる必要はないはずだ。
例えば、台湾の大手半導体メーカーTSMCが半導体工場を新設する熊本では、雇用の増加を生み不動産価格の上昇や新たなインフラ整備などにより、地域経済が活況に沸いているという事例もある。
「次なるニセコ」に求められる条件
ニセコは、この先も世界ブランドのスキーリゾート地として発展する可能性が高い。「次なるニセコ」として、目の肥えた外国人富裕層に選ばれる国内の観光地やリゾート地はどこになるだろうか。
東京、京都、富良野、安比、白馬、宮古島、石垣島など候補は数多くあるものの、東京、京都という大都市を除けば、ニセコのように外国人富裕層を惹きつける世界ブランド化したエリアはいまだにない。
富裕層対応という観点からすれば、外資系ラグジュアリーブランドホテルがある観光地・リゾート地は「次なるニセコ」の有力な候補地だ。こうしたホテルは、しがらみや先入観なく、単純にグローバルな視点から、ビジネスとして採算がとれるのか、成長性はあるのか、自社ブランドに貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資が選ばれているはずだからだ。リッツ・カールトンやパークハイアット、フォーシーズンズホテルなど外資系ラグジュアリーブランドホテルは、開業予定も含め、ニセコ以外にも、東京、京都、沖縄に加え、日光、横浜、志摩、奈良、大阪、福岡などに合計64確認できる(マリブジャパン調べ)。
また、箱根町の富士屋ホテル、長野県の上高地帝国ホテル、三重県の志摩観光ホテルといった日本を代表するクラシックホテルを有するような観光地・リゾート地も、候補地といえよう。
いずれにせよ、①官主導である、②幕の内弁当型である、③富裕層を理解していない、④消費主体で投資の観点がない、という課題を克服できるかが、「次なるニセコ」が現れるか否かの鍵となるはずだ。